販売員だって恋します
『そうか。』
「やはり、お見合いではなかったんですね。」

『そんなつもりはないぞ!』
「でしたらなんでしょう……?」

『仕事の話か……けれど、今回は彼から由佳を同席してほしいと希望があって。まあ、お前に意志があるのなら、なんらかの話を進めてもいいが。』
「それはありませんから!」

『分かった。』
父はそう言って電話を切った。

由佳は、しばらく呆然としてしまう。
父とまともな会話など、どれくらいぶりなのだろうか。

こんな風に父と会話できるようになったのも、もしかしたら神崎のおかげなのかもしれない、そう思って由佳は感謝する。

自分の部屋のソファの上で膝を抱えて座って、ふと携帯に手を触れる。
それにしても、神崎のことは気になる。
なぜ父に話があり、由佳に同席して欲しいのか。

由佳は、神崎に連絡をしてみることにした。

けれどその日は電話は発信はするものの、直接話すことは出来なかった。
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