販売員だって恋します
なんだか気持ちが引っかかったような状態で、由佳は数日を過ごすこととなったのだ。

そんな中、由佳がちょうどバックヤードに荷物を取りに行った時のことだ。
大藤の姿が見えた。

綺麗なスーツ姿だし、歩いている姿もとても綺麗なので、見間違えることはない。

むしろ少し離れていても、つい目が行って見つけてしまうくらいだ。

「大藤さん。」
会社なので名前で呼ぶわけにもいかず、苗字で呼ぶと、大藤が気づいて顔を向ける。

大藤は極々、薄く笑顔で「楠田さん。」と返事をした。
ゆっくり歩み寄ってくる。

「どうしました?たまたま?」
「はい。バックに用事があって。そうしたら、姿を見かけたので。」
「在庫?手伝いますよ。」

するりとバックヤードに入った瞬間、由佳は大藤に唇を奪われる。

「……は……。久……信さん。」
「急に姿を見せたりするから……。」
軽く何度も唇を重ねられて、由佳は力が抜けそうだ。
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