販売員だって恋します
由佳は大藤に捕まるように凭れかかった。
ふわりと鼻をくすぐる、パフュームの香りにさらに、くらりとする。

「ダメ……です。」
「由佳のダメって、……ただ煽られるだけなんですけど。」

大藤がくすくすと笑う楽しそうな声が、由佳の耳元で聞こえた。
「もう……。」
本当に悪い人、だ。

「由佳?何かありましたか?」
由佳はドキンとする。

「え?なんで……。」
「表情が少し曇っているので。」

そんな顔してるんだ……。
その事に大藤が気付いてくれたことを、由佳はとても嬉しく思う。

由佳は顔を上げた。
大藤はただ、穏やかな表情で、由佳が話してくれるのを待っていた。

由佳は思い切って、言ってみることにする。
これまでの経緯について、大藤に説明をすることにした。

「由佳に一緒に……ですか。」
腕を組んで、壁にもたれながら由佳の話を聞く大藤は、少し考えるようだ。
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