販売員だって恋します
15.新たな関係
「恐れ入ります、亭主、神崎様がお見えなのですが」
部屋の外からの声は配膳の原田のものだろう。

亭主である楠田こめかみを指でぎゅっと押さえた。
「神崎様?」
ここに神崎靖幸はいる。

「すみません、失礼します」
そう言って姿を見せたのは、神崎家の長兄である神崎雅己である。
背が高く、堂々とした姿。

一体、何が起きているのだろうか。

改めて大きな机の右側に神崎家、左側に楠田家、で座り直した。

「どういうことだろうか」
腕組みをした、楠田がゆったりと尋ねる。

「まずはお騒がせをして、申し訳ありません」
雅己が座布団から降りて、畳に手をついた。
「……っ、兄さん……!」

「神崎さん、顔を上げて。どうしたんです?」
不審気な顔で、楠田が問いかける。

「楠田様、この度の弊社からのご提案については、一旦、改めさせて頂きたいのです」
頭を下げたままではあったけれど、神崎雅己がハッキリとした口調でそう告げる。
「なぜかな?」
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