販売員だって恋します
「由佳が自分で決めなさい」
「お父さん……」

「家同士の繋がりなど、もう古いだろう。私もそんな風に考えて、由佳を嫁にやるつもりはないよ」

ふっ……と由佳は息を吐く。
「では、神崎さん申し訳ありません」
由佳は畳に手をついた。

「私にはお付き合いしている人がいます。今はその方のことしか、考えておりません」

「あの秘書の方、ですか?」
「はい。お家に相応しいとか、そういうことではなく、あの方は私をいちばんに大切に思って下さっています」

「ゆーちゃん、それは俺もです」
「私、も、あの方を大事にしたいんです。私を守ると言ってくれたあの方を、お守りしたいんです」

ただ守ってもらうだけではなくて、自分も大藤を守りたいのだと告げる。
少し顔を青ざめさせ、靖幸はぐっと拳を握った。
「お家のことは……」
引き絞るような靖幸のその声に、畳み掛けたのが雅己だった。

「靖幸、家のことはお前が考えなくていい。由佳さん、個人としてお答え頂いていいんです。それにお父上は、あなたのしたいようにと仰っている」
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