販売員だって恋します
「いえ『くすだ』には残って欲しい。残すべきです」
そこで口を開いたのは、靖幸だった。
「四季を感じることができる庭や室内、お料理。普段使いではない特別な空間です。お客様も特別なお気持ちで伺うんです。そんな場所をなくしたくない」
「楠田様、僕も同感です」
神崎の兄弟に強くそう言われて、顔を見合わせる楠田家の面々だ。
「絋、お前の意思を聞きたい」
「僕は……僕には『くすだ』の亭主たる資格はないと思っています。諦めきれないものがあって、そのためには『くすだ』を捨てるしかなかった。今も……それを諦めることはできません。僕に亭主を継がせることは、諦めて欲しい」
ぎゅっと拳を握った絋が、最後は俯くようにして吐き出すように、そう言った。
「そうか……」
「すみません。差し出がましいようだが、絋くん、君は今何をしているのかな?一人暮らしならどこかで仕事しているんだろう?」
ふと疑問に思った様子で、雅己が尋ねた。
「はい。あるお店で、ホール……配膳をしています」
「配膳……」
そこで口を開いたのは、靖幸だった。
「四季を感じることができる庭や室内、お料理。普段使いではない特別な空間です。お客様も特別なお気持ちで伺うんです。そんな場所をなくしたくない」
「楠田様、僕も同感です」
神崎の兄弟に強くそう言われて、顔を見合わせる楠田家の面々だ。
「絋、お前の意思を聞きたい」
「僕は……僕には『くすだ』の亭主たる資格はないと思っています。諦めきれないものがあって、そのためには『くすだ』を捨てるしかなかった。今も……それを諦めることはできません。僕に亭主を継がせることは、諦めて欲しい」
ぎゅっと拳を握った絋が、最後は俯くようにして吐き出すように、そう言った。
「そうか……」
「すみません。差し出がましいようだが、絋くん、君は今何をしているのかな?一人暮らしならどこかで仕事しているんだろう?」
ふと疑問に思った様子で、雅己が尋ねた。
「はい。あるお店で、ホール……配膳をしています」
「配膳……」