販売員だって恋します
「それは『くすだ別邸』として、人数を限った宿泊のお客様に『くすだ』のお料理を体感していただくというもので、オーベルジュのような感覚です。お泊りで料理を楽しんでいただきながら、お料理だけお楽しみいただくこともできるという」
「絋、その別邸ではお前の料理人は、腕は振るえないか」
その父の問いに、絋がすうっと目を細める。
「いえ。僕の料理人はそんなにヤワじゃありません。けど、彼に『くすだ』の名を背負わせる訳にはいかないでしょう」
その場に神崎雅己の低い声が響く。
「少し考えたのですがね、まずは一旦、期間限定でやってみませんか?改築も完成までには時間がかかるし、その間に話題になるようなことなら、こちらは歓迎です」
それは雅己からの譲歩のようでいて、したたかな提案だった。
一見『くすだ』に有利なようだけれど、期間限定で失敗すれば、次はないということだ。
「つまり、それが好評なら『別邸』とするということでしょうか?」
「そうですね。こちらにも失敗のリスクが少なくて済むし、そこはお互い様でしょう」
にっこり笑う雅己には、巨大なホテルグループを背負っている芯の強さを感じる。
一筋縄ではいかない感じだ。
「絋、その別邸ではお前の料理人は、腕は振るえないか」
その父の問いに、絋がすうっと目を細める。
「いえ。僕の料理人はそんなにヤワじゃありません。けど、彼に『くすだ』の名を背負わせる訳にはいかないでしょう」
その場に神崎雅己の低い声が響く。
「少し考えたのですがね、まずは一旦、期間限定でやってみませんか?改築も完成までには時間がかかるし、その間に話題になるようなことなら、こちらは歓迎です」
それは雅己からの譲歩のようでいて、したたかな提案だった。
一見『くすだ』に有利なようだけれど、期間限定で失敗すれば、次はないということだ。
「つまり、それが好評なら『別邸』とするということでしょうか?」
「そうですね。こちらにも失敗のリスクが少なくて済むし、そこはお互い様でしょう」
にっこり笑う雅己には、巨大なホテルグループを背負っている芯の強さを感じる。
一筋縄ではいかない感じだ。