販売員だって恋します
「それで資格がないと?」
深く俯く絋は頷いた。

「確かにあの時の私ならば、理解は出来なかっただろう。こうして、お互いに距離を置いて、たくさんの事に気付いたし、また、失って初めて気付く事もある。絋、一度その料理人に会わせなさい」
「はい……」

「しかし、よくこちらに来る決心をしたな」
「それは由佳ちゃんの……」

え?!私??

「由佳ちゃんの彼ですよ」

「お、大藤さん?!」
「そう。彼が僕の居場所を探して、知らせてくれた。由佳ちゃん、すごい彼を持ったね」

絋が、目を細めて、ふわりと笑う。

しかし、突然、こんなところで大藤の名前が出て、真っ赤になる由佳だ。

もう!大藤さんてば、大藤さんてば!!
何にも言わないし。
何も言わないでこんなことして……格好良すぎじゃないっ!

「こんなやり方もあるんだな。中々の手腕と見受けられる。靖幸、敵わなくても仕方ないだろう」
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