販売員だって恋します
雅己にさらりと言われて、靖幸はため息を添えつつ返す。
「今、それを言いますか」

そんなこと最初から、薄々気付いていた。
ただ、諦めきれない気持ちに決心をつけたかっただけで。

そして、恐らくは……。
「兄さんも、大藤さんに言われたのじゃないですか?」
で、なければ手腕など、知ることもないはずだ。

「バレたか。そんなところだな。あの人は人を操るのが上手い。ホールディングスも安泰だろうな。」

つまり、大藤が影で動いてくれていた、ということだ。由佳のために。

もう、もう、もう……っ、
すっごく会いたいじゃない!

今すぐ抱きついて、ぎゅうぎゅうしたいくらいだ。

「由佳も面白い人とお付き合いしているようだ。その方も今度連れておいで。一度、こちらで食べていただきなさい」
「はい……」

「これは大団円、ということでよろしいですか?」
悪戯っぽい顔で、神崎雅己がそう告げる。
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