販売員だって恋します
お帳場はなくなり、提携先との専用クレジットカードが作られ、外商も担当先顧客を大幅に減らした。

改めて整理されたそのリストを確認したのは、大藤だ。

それでも統合せずに済んだだけ、まだマシだ。
そう言い聞かせながら作業した。

あの気持ちを、もしかしたら『くすだ』も味わうのかもしれない。

お店が残ればまだいいが、経営不振にでもなれば、どこかの企業に買い叩かれるということも考えられた。

早めに経営を知るものにアドバイザーに付いてもらった方が望ましい。
それは、大藤も思ったことだ。

そして大藤よりもっと外食産業に詳しい神崎の坊んなら、なおさら分かっていただろう。

そして最初はさほどでもなかったのに、由佳を傍に置いているうちに、由佳に惹かれる。

それも、……分かる。

由佳は確かに綺麗な人だ。
けれどそれだけではない。
子供の頃から培《つちか》ってきた品が備わっていて、しかも人を癒す術《すべ》を心得ている。
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