販売員だって恋します
──さすが、か……。
「では、そのおススメのシェフのお料理を頂きます。車ではないので少しお酒も」

「日本酒でもよろしいですか?」
「おススメが?」

「ええ。蔵元から直接取り寄せているものがあります。今日届いたので、いちばん美味しいですよ」
「うん。ではそれを頂きます」
「ご用意いたします」

前菜は5品ほどが大きな皿に盛り付けされている。
どれも綺麗で、料理人が手を掛けて作っているのが良く分かった。

料理は和風でもあるけれど、食材にスモークサーモンを使っているところなどは、確かに創作和食なのかも知れなかった。

見た目も味も、なかなかのものだ。
これならば、由佳を連れて来られるなとふと思って、今日の目的を思い出した。

そう、料理を味わいに来た訳ではない。

料理が終わりかけた頃、
「いかがですか?」
と絋が声を掛けてきた。

「いいお店ですね、楠田さん」
それを聞いた絋が、緩く口元に笑みを浮かべる。
< 183 / 267 >

この作品をシェア

pagetop