販売員だって恋します
「知り合いのご紹介ですか」
「いえ。正確には、私の一目惚れに近いんですよ。彼女を社員食堂で見かけて」

なんて人なの?!
しゃあしゃあと淡々と、そんなこと言うなんて。

由佳の頭の中では、こいつからこの大嘘つき、に格下げだ。

しかし食事は完璧だし、個室なので雰囲気も気分もよく、美味しいワインでさらに食が進む。

「由佳、あまり飲みすぎないように。」
「美味しいんですもの。」
大藤が苦笑して由佳を見る様は、本当の恋人同士のようだ。

その様子を見て、今日の主催である男性も納得したようだった。

「今日は楽しかった。また機会があれば、お会いしましょう。」
男性はそう言って、運転手付きの車に消えた。
それを見送って、やっと肩の荷が降りた由佳である。

「良かったんですか?」
「何がです?」

先程までの甘やかな雰囲気は、全くない。
他人とまではいかないが、友人くらいの距離感だ。
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