販売員だって恋します
「久信さんはずるい……」
むううーっと由佳は膨れていた。

「うん?」
「そーゆーの、他の人にやっちゃ絶対ダメですから。」

「そういうの?」
「……っ!頭なでなでとかですっ!」

「するわけないですよね?キャラじゃないし。今もつい、手が撫でてしまったんですよねぇ。」

不思議だなとくすくす笑いながら、大藤は自分の手を見た。

本当に不思議なのだ。
大人の関係しか求めていなかった自分が、誰かを甘やかすなんて考えられない。

甘やかすのが嬉しい、などということも。

「手も綺麗なんですもん。そんな風にしちゃダメ。」
「どうしたんですか?今日の由佳は。ダメダメなんですか?」

「どうしたんですか?はこちらです。そんなに甘い人でした?」
「おや?」

由佳はプリプリしているけれど、大藤にはその理由は分かっていたから。
< 200 / 267 >

この作品をシェア

pagetop