販売員だって恋します
「成田さんが……」
「ええ。出たいでしょう?その結婚式。」
「もちろんです!けど……」

ん?と大藤は首を傾げている。
由佳はその大藤の腕に、きゅっと抱きついた。

「久信さんは、そうやって他人のために動いてばかりいますね。尊敬します。」

「え……」
大藤は驚いて、由佳を見る。

そんな風に考えたことはなかったから。

「裏方で支えるのが俺の仕事、なんですよ?」
「うん。お仕事でも、プライベートでも、でしょう。」

ほーんと、すごい人なんだから。
そう言ってくすくすと笑いながら、ぎゅうっと腕に抱きついているのは、何故なのだろうか。

「どうしたんです?甘えたいの?」
「いーえ。久信さんは私のって、主張してるんです。」

大藤はくらりとする。

自分が今まで当然と思ってやってきたことを、由佳が人を支える仕事だと思ってくれて、尊敬すると言ってくれる。
< 204 / 267 >

この作品をシェア

pagetop