販売員だって恋します
「近い……です」
「部屋に来ませんか?」

「そ……れは……」
「子供じゃないんだから、分かりますよね」

胸がドキンと音を立てた。
そんな風に言うなんて。
分からない、なんて逃げることを許さないような。

それは確かにそうかも、だけど……。
子供では、ない。

大藤の指先が、由佳の顎から首筋をすっと撫でていく。
柔らかく触れながら、指は首から耳を辿りくすぐるように指が滑っていった。

「……んっ……。」
思わず首がすくんでしまう。

その感覚がくすぐったいのか、感じたのかは分からないけれど、思わず漏れてしまった声に、くすりと笑われたのは、間違いない。

「や……」
「本当に?」
耳元で囁かれた声。

その声には面白がる響きが含まれていた。
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