販売員だって恋します
「お疲れ様です、皆さん。移動でお疲れのところ申し訳ないのですが、最後の飾り付けをお願いしたくて。」

あちらに、と大藤が指差した先には、花が沢山入ったカゴが準備されている。

「あれでこのチャペルを皆さんの手で、飾って頂きたいんです。」

手作りの結婚式として、好評の企画らしい。

「友人のチャペルを飾るのは初めてだわ。」
「御祝儀で車1台分は使われた、末森マネージャーでもですか?」

「由佳―?あんたってば、奏の教育が行き届いているようねー?」
目の奥が笑っていない笑顔の末森が、花を手に、由佳に迫る。

「だってー、末森マネージャーがいつもそうやって言うからぁ。」

その2人のやり取りに大藤はくすくす笑っている。
「仲良くしてくださいね。では、よろしくお願いいたします。私は打ち合わせに行ってまいります。」

この場にいるメンバーに微笑みかけ、くるりと背を向けた。
大藤の綺麗な姿勢と歩き方には、由佳はつい目を奪われてしまう。
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