販売員だって恋します
19.二人で見る空は
「由佳ちゃん?え?」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔、とはまさにこのことなんだろうと思うような、キョトンとした表情。

隣りには、そんな奏を甘く見つめる成田翔馬だ。

「奏ちゃーん!」
一際高い声は、笹塚家の奥さんのものだった。
その声が聞こえるにあたって、ますます、きょとん、としている奏だ。

ここはどこ?とでも言いだしそうな雰囲気である。

奏は、自分の部下や、上司や彼の同僚がいる、この状況を全く掴めていないようだった。

「ドレス!着てみて欲しいんです!一生懸命持ってきたんですよー!」
「ド、ドレス?!」
「ウェディングドレスでーすっ!」
姿が消えていたのはそういうことだったのか、と納得した。

笹塚の奥さんは別会場で、ドレスの準備をするために姿を消していた、という事だろう。

バイヤールームの人だもんね。

「僕が選んだ。披露宴は別でちゃんとやるから。気に入らなかったら、ごめん。でも奏なら何でも似合うと思うんだ。」
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