販売員だって恋します
当の大藤は、涙と鼻水でぐすぐずの奏にティッシュを渡していた。

「あんた、泣くと明日顔が腫れるわよ。」
大藤と同じく冷静なのは末森マネージャーだ。

「だって、だって……」
「まあまあ、とりあえず、ドレス見てみませんかー?」

笹塚妻の元気な声がその場に響いて、一瞬しんみりした雰囲気は、あっという間に吹き飛んだ。

「はい。あの、行ってきます。」

そう言って成田を見上げる奏は、普段の会社での姿とは違って、素直に甘えているような気がする。

「うん。行っておいで。」

それに対する翔馬も、柔らかい雰囲気で、以前に見かけたクールなイメージとは違っていた。

どちらも整った顔立ちのせいもあり、やたらにお似合いだ。

その後、女性だけで奏のドレスを見に行くことになる。
奏はもともと綺麗な人ではあったけれど、白のドレスを纏った姿は、言葉には出来ないほどの綺麗さで。

これは成田さんもメロメロになるだろうな、と思うと由佳もうきうきしてしまった。
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