販売員だって恋します
「なんです?」
「可愛い彼女だねって言うから、婚約者だと言ったんです。」

「っこん……」
「ん?」

緩く顔を覗き込むのはやめて欲しい。
嬉しすぎて、頬が緩んでしまっているから。

そんな風に思ってるの……そんなサラッと言わないで……。

また、運転手が大藤に話しかける。

大藤が英語が話せると分かっているから、彼には全く遠慮がないのだ。

その中で、由佳が聞き取れたのは、キスという単語。
それに、大藤は苦笑して英語で返す。

「キス?」
「キスしていいよって言われたんですよ。日本人は遠慮し過ぎだと。だから、日本人は内気《シャイ》だから、無理なんだと答えました。」

「はーもう、照れます……。」
「ね?」
くすくす笑う大藤は楽しそうだ。

大藤が連れて行ってくれたのは、先程少し話に出ていた、公園にある夜店だった。
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