販売員だって恋します
「大藤さんもいます。」
「大藤?あの時の立役者かな。そう……彼も……」
父は少し考えるように顎に手をおいた。

そして口を開く。
「こんな姿だが、差し支えなかったら、入ってもらおうかな。お礼を言いたいし。」
「はい。」

由佳が歩いてドアを開けると、椅子にそれぞれが座っていた。

「お父さんが皆さんにお入り頂いて、と言っています。」
絋が立ち上がる。

「お2人も。お願いします。」
由佳は、大藤と沢木にも声をかける。

大藤はいつも通りだが、沢木はひどく戸惑っているように見えた。

「い……いえ、俺は絋を連れてきただけだし。」

「どうしてもお嫌でしたら無理にとは言いません。けどお父さんは入ってもらって、と言っていたので。」

「沢木さん、大丈夫ですよ。」
大藤は沢木の肩をポン、と叩く。
沢木は大きく息を吐いた。
「分かりました。」

カラリとドアを開けて、みんなで病室に入る。
「お父さん…」
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