販売員だって恋します
くすりと笑った大藤が少しだけグラスを傾けて自分の口にウイスキーを含む。
「えー?久信さん、くれるんじゃ……」

すかさず大藤は由佳の口をふさいで、一口のウイスキーを注ぎ入れる。

こくん、と嚥下した由佳の喉元が妙に艶かしい気がした。

「美味しい?」
「ん。けど……酔いそう。いいお酒なの?甘いのね」

「もっと、ほしい?」
「酔いそうだから、少しだけ」

少しだけ、由佳に口移しで飲ませたそれを、味わうように、大藤は由佳の口中を舌で搦めとる。

アルコールが緩く2人の間を行き来して、甘い香りを立てた。
それがなくなっても、大藤はキスを続ける。

由佳が蕩けるまで、何度も何度も唇を重ね、舌を追いかける。
由佳から甘い吐息がこぼれた。

「ひ、久信さん……」
「ん?」

「酔っちゃう……」
「何に?」

上目遣いで大藤を見た由佳が、大藤の唇に自分のそれを重ねる。
「キス……に、です……」
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