販売員だって恋します
敷居の手前で由佳は両手を付いて、ご挨拶をする。
「楠田由佳です。」

神崎(かんざき)靖幸(やすゆき)です。」
彼も、席から頭を下げて挨拶をしてくれる。
年は由佳の3、4歳上くらいに見えた。

明らかに仕立ての良いスーツ。
そして、その名前だ。

「神崎様…」
神崎ホテルグループの創始者の一族、ということだろう。

神崎ホテルグループは古くからある、由緒正しきホテルであり、格式ある古いものから新しい最新のものまで、いくつかのホテルをチェーン展開している、巨大なホテルグループだ。

彼はその創始者の一族のうちの誰かなのだろう、と推察された。

「由佳さん。こんにちは。」
「はじめまして。」

何故か、神崎の向かいに由佳は座らされる。

なぜか、もなにもないか…。
おそらくは、お見合い。

けど、いつかはそういうことがあるとは思っていた。
なので、特段驚きはしないが…。

由佳が驚いたのは、その相手だ。
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