販売員だって恋します
「あの時の……?」
「はい。だから、今回お会い出来るのを楽しみにしていたんです。」

「私が退屈して、遊んでくれただけなのに、怒られたんですか?ごめんなさい……。」
くすくす笑われた。
「昔のことですよ。」

全く知らない人よりも、良かったけれども。

「由佳さん、今デパートにお勤めなんですって?だからかな、本当にお綺麗になられたんですね。お父様も嬉しそうでしたよ。ご自慢の娘さんなんですね。」

「父が…?」
「ええ。しっかりしていて、自立している。勤務先でも中堅の立場のようで、自慢の娘だって言ってましたよ。」

由佳にしてみれば厳格な父しか知らず、そんな風に他で、由佳のことを言っているなんて思わなかった。

「知らなかったです……。父がそんな風に……。」
「弱みを見せない方ですからね。(こう)くんがおうちを出られた時も、相当なショックだったようですから。」
紘が兄の名前だ。

「ご存知なんですね。」
「ええ。聞いて欲しいんですが、全てを含んだ上で、結婚を前提にお付き合いしていただきたい。」
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