販売員だって恋します
「じゃあ、少しだけ調整してくれる?思った通りでいいから。」
「はい!」

強い発色のものは、一瞬目を引かれたりするけれど、実際店頭で商品として購入されるのは、基本的には定番が多いのがブレアだ。

由佳も一時的な流行りものとしてではなく、長期的に愛用してほしいなあと思っている。

「由佳さん。」
「はい。」
すらりと背が高い、スーツ姿の男性はとても目を引く。
そして、日中のこの時間。

しかもスマートだし、デパートでも物怖じしないほどの品格。

「さすがに、女性ばかりで気が引けますね。」
そんなことを言って笑っているのは、神崎靖幸だ。

「神崎さん!」
「どうぞ、靖幸と。たまたま近くに打ち合わせで来たので、寄ってみたんです。」

柔らかい笑みや、人当たりの良さは、自身も接客をしているからなのだろうか。
気が引けるとは言っているけれど、そんな気配は微塵も感じない。

「差し入れです。」
手に持っていた紙袋を、由佳に差し出した。
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