販売員だって恋します
「な、なにす……」
「いいから、今日はそのお出かけにいってらっしゃい。」

「でも、でも……。」
上手く言えないけれど、他の人と大藤が行くのは何だかイヤだ。

「分かったから。今日、急に時間が空いたので、思いついただけだったんです。明日、一緒に行ってくれますか?」

「はい!」
「いい子ですね。では、また明日。」
そっと身体を離して、大藤は由佳の頬を撫でる。

「はい……。」
由佳はこくんと頷いて、その場を去る。


大藤は、そのしなやかな後ろ姿を見ていた。
「……たく……なんて顔で見るんだか。」

あんな綺麗な姿で現れたから、一瞬目を奪われた。
けれどその瞬間、察したこともあり。
デートか……。

由佳は別に自分のものでもなんでもない。
付き合っているわけでも。
知り合い程度のものだ。

身体を重ねたって、朝にはなかったことにされてしまう程度の。
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