販売員だって恋します
「ゆーちゃん、拗ねないで?お願いだから。」
さっきまでの大人びた言動は、なんだったのかというくらい、距離感が近い。

確かに兄の友人くらいの感じだ。
もうっ!!
やけくそのように、それでもマナーは守って、由佳はお皿の料理をぱくぱく平らげていく。

急にお腹が空いたのだ。
「美味しい?」
「すっごく、美味しいです!」

食事が終わり、デザートに入る頃には話も盛り上がり、さらにいい雰囲気になっていた。

幼い頃の軽井沢での話や、接客業あるあるなどで、楽しく話ができたからだ。

「ねえ、ゆーちゃん?それでいて、改めてなんだけれど、結婚はまだ考えられないのなら、それでもいいからたまに会いたい。それはいい?」

「もちろん。」
「良かった。」
神崎のぱあっと明るく笑う様は、花が咲いたようだ。

「ゆーちゃんなら分かってくれると思うんだけど、どうしても神崎家の……って見られてしまって、心を許せないんだよね。」

由佳には気持ちが分かる。神崎の周りにはそういう人も、いるのかもしれないが……。
確かに分かるだけに、由佳にはそういう感情はない。
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