販売員だって恋します
「私で良ければ。」
「良かった!また、誘うから。」
「はい。」

ワインを飲んでいたので、タクシーで神崎はマンションの前まで送ってくれた。

「気をつけて。」
「今日はありがとうございました。」
「こちらこそ。また、連絡します。」
「はい。」

由佳を見送り、手を振って、タクシー運転手に神崎は自宅の場所の説明をする。

後部座席に持たれながら、少し前のことを、神崎は思い返していた。

神崎靖幸は今、旅館の経営を1件任されている。

客室付き露天風呂も備えたその旅館は、単なる旅館ではなく、神崎ホテルグループの1つでもあり、いわゆる高級旅館だ。

靖幸が今、任されている仕事は、アドバイザーがメインの業務になる。

神崎ホテルグループを転々とし、経営や集客、イベントについてのアドバイスをしたり、場合によっては本社と交渉したり、マスコミと交渉したりもする。

立場としては本社付きの、企画部長という立場だ。
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