販売員だって恋します
「大丈夫かな?」

「俺なんかと、関わり持たない方がいいですよ。」
自嘲気味にそう言った大藤に、成田は緩やかに首を傾げた。

「どうして?家族もいなくて、怪我をしても迎えにきてくれる人もいないというのに、心配してはいけないか?」

成田のその回答は、大藤には真っ当過ぎて眩しいくらいだった。

「何か、悪いことを君がしたのか?」
「いえ……一方的に殴られたんですけど。まさか、向こうにそういう心得があると思っていなかったので。仕事なので仕方ないです。」

成田の疑問に、大藤は淡々と答える。
いいところの紳士らしいし、こんな人には分からない世界だろう。
そう思った。

自分の仕事はどうせ、真っ当な仕事ではない。
人の裏ばかり見て、それをメシのタネにするような仕事だ。

「君はまだ、それを続けるつもりか?」
「こんなことになっては、どうでしょうか…。問題を嫌う会社ですから。クビかもしれないですね。」

「そうか…。仕事をしないか?」
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