販売員だって恋します
同情なら勘弁してほしいのだが。

「僕の子供に運転手を探しているんだ。子供の相手なんて馬鹿らしいか?」
子供に運転手?どんな家だ…。

「うちの子しっかりしているから驚くよ。ケガが治ったら、自宅の秘書と兼任してくれたらとても助かる。今の秘書がちょうど父からの代の人で新しい人を探しているから。家はうちに離れがあるから、そこを自由に使ってくれて構わない。」

家も用意されて、仕事もあり、ケガの件も了承した上で雇うって…

「バカなんですか?」
「うん?」
「俺なんて得体の知れない人間、家にいれるとか、あんたバカなのかって聞いてんですよ!」

「うーん…、会社の経営はバカでは出来ないな。それで、数多の人間を見てきてね。君は大丈夫って思う訳だ。僕を裏切れる?」

大藤は人に真っ直ぐに目を見られることなんて、なかった。
ここ何年も。

「分からないですよ。」
そう答えた大藤に成田はふっと笑った。

一瞬その時に、大藤は得体の知れない感覚に襲われ、ぞくんとする。
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