販売員だって恋します
大袈裟にすごーい!高ーい!とか言われたら、逆に冷めるのが神崎だ。

かと言って、ふーんだけでも何を考えているんだろうと思うだろう。

神崎は共有できるものや、共有できる感覚は貴重だと分かっている。
料理は、仲の良い料理長が特別に腕を振るってくれたもので、見た目も味も最高で、神崎は心の中でやり過ぎじゃないか?と思うくらいだった。

「いかがですか?」
突然テーブルに落ちてきた声に、神崎は驚いた。
長兄の雅己だったからだ。

「に、兄さんっ!」
「え?お兄さん?靖幸さんの?」

……と言うことは、今の神崎ホテルグループの幹部と言うことになる。

あらら……。

由佳は立ち上がって、
「こんにちは。楠田由佳です。」
と挨拶して頭を下げた。

「はじめまして。神崎雅己です。」
雅己はにっこり笑い、どうぞと由佳に椅子を進めて、自身は綺麗な所作で立っている。
< 96 / 267 >

この作品をシェア

pagetop