金木犀
ーside 星南ー
それから、どれくらい時間が経ったんだろう。
あれから1度も発作を起こさず、気づいたら辺りは暗くなっていた。
体もだいぶ楽になっている。
テーブルに置かれていた手紙に気づき、手に取った。
相手は湊からで、内容は…
『よく眠れているみたいでよかった。退院の目処が着きそうだから、起きたらPHSを鳴らしてほしい。』
と、書かれていた。
湊の番号に掛けると、優しい声で出てくれた。
それから、10分もしない内に湊は来てくれた。
「星南、おはよう。顔がスッキリしたみたいだな。」
「うん。それより、退院できるの?」
「ああ。だいぶ顔色も良くなってきたしな。
発作の頻度も減ってるし、検査結果もここに来た時よりもだいぶ良くなった。
元々、2、3日を目安としていたんだ。長期入院は星南にとっても負担がかかるからな。
今は、体の調子は大丈夫か?苦しいとか痛いところはないかな?」
「うん。大丈夫。それより、治療費っていくらくらいなの?入院費も含めたら割とかかるよね?」
私は、携帯に入っている銀行のアプリを開いて、残高を確認する。
最近は、そこそこバイトに入れていたし貯金はあるけど。
「星南、そこは俺が払うから何も問題ない。
星南、ちょっとこっち見て。」
携帯を触っていると、携帯を取り上げられ私は湊に顎をすくわれた。
「星南。
星南は高校生なんだから、頼れるところは頼っていいんだよ。
本来なら、生活費とか入院費のことなんて星南が気にするようなことではない。
言っただろう?一緒に暮らそうって。
まあ、まだ星南が完全に俺を頼ってくれるかどうかは俺次第だけどな。
今は、何も気にせず体を休めることだけを考えろ。」
1ミリも外さない視線に、信じられないくらい心臓が加速していく。
頼ってもいいの?
たしかに、一緒に暮らそうって言ったのは湊であって、生活費とか自分にかかる費用のことは私が出さないといけないんじゃないの?
「だ、だけど私。自分のことは自分でちゃんとできるくらいのお金はあるし、それに全部を湊に頼ることなんてできない。
そんなの、湊の負担になるだけで…」
そこまで言いかけると、気づいたら私は湊の腕の中に収まっていた。
もう、それ以上は何も言わせないと言っているようで。
優しく、だけど今までより強く抱きしめられ私は完全に頭の中が空っぽになっていた。
「なあ、星南。」
しばらく抱きしめられていると、湊は私から少し体を離し、再び私の視線を捉えていた。
「星南。もう、頑張らなくていいよ。
星南はもう、十分に頑張ってきた。
やりたいこと、たくさんあっただろう?
この前の夜、星南はバイトを人一倍頑張っていたって聞いて、俺なりに色々考えていたんだ。
まず俺にできることは何だろうって。
星南の傍で支えていくことはもちろん、星南に学生の時にしか出来ないことを思いっきり楽しませてあげようって。
だから、無理に信じろとは言わないけど。
少しでもいい。完全じゃくてもいいか俺の事を頼って。」
気づいたら、目から溢れるほどの涙が流れ止まらなくなっていた。
本当なら、やりたいこともたくさんあったし趣味だってあった。
好きなことだってたくさんあった。
昔から、こんなに無関心な私じゃなかった。
高校生になったら、働ける歳になるし私が1人で生計を立てないといけないって思っていた。
1人で生きていく覚悟を決めないといけないって思っていたから。
15歳の頃の私は、母親に捨てられたことから断ち切れず、ずっと暗闇の中をさ迷っていた。
だけど、いつまでもこうしてはいられないと私なりに気づいて、今まで必死に生きてきた。
誰にも頼ることなんてなかった。
それから、どれくらい時間が経ったんだろう。
あれから1度も発作を起こさず、気づいたら辺りは暗くなっていた。
体もだいぶ楽になっている。
テーブルに置かれていた手紙に気づき、手に取った。
相手は湊からで、内容は…
『よく眠れているみたいでよかった。退院の目処が着きそうだから、起きたらPHSを鳴らしてほしい。』
と、書かれていた。
湊の番号に掛けると、優しい声で出てくれた。
それから、10分もしない内に湊は来てくれた。
「星南、おはよう。顔がスッキリしたみたいだな。」
「うん。それより、退院できるの?」
「ああ。だいぶ顔色も良くなってきたしな。
発作の頻度も減ってるし、検査結果もここに来た時よりもだいぶ良くなった。
元々、2、3日を目安としていたんだ。長期入院は星南にとっても負担がかかるからな。
今は、体の調子は大丈夫か?苦しいとか痛いところはないかな?」
「うん。大丈夫。それより、治療費っていくらくらいなの?入院費も含めたら割とかかるよね?」
私は、携帯に入っている銀行のアプリを開いて、残高を確認する。
最近は、そこそこバイトに入れていたし貯金はあるけど。
「星南、そこは俺が払うから何も問題ない。
星南、ちょっとこっち見て。」
携帯を触っていると、携帯を取り上げられ私は湊に顎をすくわれた。
「星南。
星南は高校生なんだから、頼れるところは頼っていいんだよ。
本来なら、生活費とか入院費のことなんて星南が気にするようなことではない。
言っただろう?一緒に暮らそうって。
まあ、まだ星南が完全に俺を頼ってくれるかどうかは俺次第だけどな。
今は、何も気にせず体を休めることだけを考えろ。」
1ミリも外さない視線に、信じられないくらい心臓が加速していく。
頼ってもいいの?
たしかに、一緒に暮らそうって言ったのは湊であって、生活費とか自分にかかる費用のことは私が出さないといけないんじゃないの?
「だ、だけど私。自分のことは自分でちゃんとできるくらいのお金はあるし、それに全部を湊に頼ることなんてできない。
そんなの、湊の負担になるだけで…」
そこまで言いかけると、気づいたら私は湊の腕の中に収まっていた。
もう、それ以上は何も言わせないと言っているようで。
優しく、だけど今までより強く抱きしめられ私は完全に頭の中が空っぽになっていた。
「なあ、星南。」
しばらく抱きしめられていると、湊は私から少し体を離し、再び私の視線を捉えていた。
「星南。もう、頑張らなくていいよ。
星南はもう、十分に頑張ってきた。
やりたいこと、たくさんあっただろう?
この前の夜、星南はバイトを人一倍頑張っていたって聞いて、俺なりに色々考えていたんだ。
まず俺にできることは何だろうって。
星南の傍で支えていくことはもちろん、星南に学生の時にしか出来ないことを思いっきり楽しませてあげようって。
だから、無理に信じろとは言わないけど。
少しでもいい。完全じゃくてもいいか俺の事を頼って。」
気づいたら、目から溢れるほどの涙が流れ止まらなくなっていた。
本当なら、やりたいこともたくさんあったし趣味だってあった。
好きなことだってたくさんあった。
昔から、こんなに無関心な私じゃなかった。
高校生になったら、働ける歳になるし私が1人で生計を立てないといけないって思っていた。
1人で生きていく覚悟を決めないといけないって思っていたから。
15歳の頃の私は、母親に捨てられたことから断ち切れず、ずっと暗闇の中をさ迷っていた。
だけど、いつまでもこうしてはいられないと私なりに気づいて、今まで必死に生きてきた。
誰にも頼ることなんてなかった。