金木犀
「星南…。起きろ。」
誰かが、呼んでる声がする。
重い瞳を開き、私はその呼ぶ声に目を向ける。
「何よ…」
「何じゃないよ。まだご飯食べてないだろ?」
湊は、私の体を半分起こした。
「別に…1食抜いたからって死なないんだから。
わざわざ起こさなくても…」
「だめだ。だから、そんなに体が細いんだな。
いいか、星南。
ちゃんとご飯を食べること。
体の調子を整えるために、体に栄養を取り込むことも大事なことなんだ。
病気が悪化しないためにもな。」
「…分かった。」
それから、私は湊に手を引かれリビングで夕食を食べた。
「そういえば、星南はお昼はどうしてる?」
「あー…。」
食べる日もあれば、食べない日もあった。
そもそも、学校にはあまり顔を出していなければお昼を食べる相手もいない。
別に、省かれているわけではない。
ただ、誰かに合わせることが苦手で、どちらかといえば1人でいることが楽だから、いつも1人でいることの方が多い。
お昼休みはいつも適当に過ごしていて、屋上に行ったり体が疲れたなら家に帰っていた。
だから、学校で必ずお昼ご飯を食べているわけでもなかった。
家に帰っても、猛烈な眠気に勝てず寝て過ごすことも多い。
そもそも、お小遣い稼ぎのために夜活動していることが多かったから、昼間は基本起きていることも辛かった。
気づけばいつも夕方で、学校に行く日なんて週に3日ほど。
「別に…言う必要なんてないでしょ?」
「えっ?」
「あのさ、湊に拾ってもらったことは本当に助かったって思ってる。
だけど、必要以上に私に干渉したり学校のこと確認するような事しないでくれる?
プライベートなことに、口挟まれることが嫌なんだけど?」
私はそこまで言うと、気づけば湊に抱き寄せられていた。
「悪い。」
「…分かったなら、それでいい…けど。」
「学校で上手くやれてないのか?」
「は?」
湊の思いもしなかった言葉に、私は湊から離れた。
きっと、湊は勘違いしている。
「そんなに、学校のこと触れてほしくないなんてそういうことだろ?」
「別に。私は、1人でいる方が楽なの。
いじめを受けてるわけでもなければ、別に他人に興味がないわけ。
そこのところ、勝手に勘違いしないでくれる?」
「まあ、星南の性格上そんなところだろうとは思ってたけど。
だけど、星南。
無理に友達を作れとは言わないけど、高校生活なんて人生に1度しかないんだ。
それも、3年間って決められた期間でしかない。
学生時代にしか出来ないことを、思いっきり楽しみなよ。
本当は、星南も将来のこととか色々と考えているんだろう?」