金木犀
湊の言葉に、ドキッとした自分がいた。
自分でも、いつまでもさぼっているわけにはいかないと思っていたから。
将来のことも、来年には考えないといけないわけで。
とりあえず、大学に進もうかなって1年生の頃から軽く考えてはいた。
だから、湊の言葉が余計に心に響いてくる。
「まあ、あんまり思い詰めず、ゆっくりやれよ。」
「えっ?」
「星南のやりたいようにやればいいよ。
俺は、星南の選んだ道を一緒に歩みたいと思っているから。
どんな決断をしても、俺は星南の味方でいる。
まあ、星南が道を踏み外したり迷ったりしないように、色々と口を挟むかもしれないけどそこは大目にみてよ。」
湊の瞳から反射して、険しくなった自分の表情が見えた。
段々と険しくなった私を見て、湊なりに気を遣ってくれたんだと思う。
切羽詰まらないようにと、そう話してくれたんだと思う。
人の感情を読み取ることが上手だから、私も湊には言いたいことを言える。
湊の言葉はいつだって、私を想って話してくれる言葉だと分かっている。
まっすぐに、私の気持ちと向き合ってくれるから素直に湊の言葉を聞き入れている自分がいる。
そうでなければ、湊と暮らす道を選んでいないと思うから。
「ありがとう。
私も、今のままだと出席日数が足りなくなることくらい分かってる。
あまり、心配しないで。ちゃんと、学校に行くから。」
そう言って、私は湊に笑顔を見せた。
安心したかのように、湊は再び私を抱きしめていた。
「そろそろ、ご飯食べるか。」
「うん。」
湊に手を引かれ、私は湊の隣に座った。
「量が、多すぎじゃない?」
「そうか?」
湊が用意してくれた料理の量は、普通の成人の人の量と同じなんだろうけど…
私は、生まれつき胃の機能が弱くて大きさも小さいと言われていた。
それが分かったのも、生まれてすぐの話だった。
「無理に全部食べなくていいよ。食べられる物を食べてくれればいいから。」
「うん。」
それから、私は湊と一緒にテレビを見ながらご飯を食べ終えた。