金木犀
ーside 星南ー
私の兄が、私へと連絡を取ろうとしてくるのはきっとよっぽど私に何かを伝えなければいけないことなんだと思う。
湊から、兄から連絡があったと聞いて母親か兄のどちらかに何かあったのかもしれないとすぐに分かった。
滅多に会話をしなかった兄と私。
私は、兄には空気のように扱われ母親にはストレスの捌け口になっていたから。
血の繋がりがあったとしても、誰も私を大切に思ってはくれなかった。
一生このまま、過去を引きずりながら生きていかなければいけないのかな…。
離れ離れになったのに、私の心はいつもあの人から支配されている。
その証として、湊から過去のことについて触れられる度、心が大きく動揺して、うるさいくらいに心臓が音を立て加速していく。
それでも…。
もしかしたら、過去と自分を切り離すためにも母親と話すべきなのかもしれないと思う自分もいる。
逃げてばかりではいけないのかもしれない。
逃げた先に、明るい未来なんてきっとないのかもしれない。
私自身が、過去に終止符を打って前を向いて生きていく覚悟を決めないといけないよね。
頼って、甘えてばかりでは湊に負担ばかりをかけてしまう。
湊と幸せになりたいなら、私自身も変わらなければいけないのかもしれない。
だけど…。
怖い。
たまらなく怖い。
母親と会ったら、私はもう今の私でいられない気がして…。
湊と過ごすこの幸せな日々が、失われる気がして。
せっかく、自分の居場所を見つけたのに私は全て失ってしまうのかな…。
「湊…。」
「ん?」
「怖いよ…。」
「…怖い…よな…。」
「たまらなく、不安で怖いよ…。
家族と話をして、自分が自分でなくなることも。
この、幸せを失うことも。」
湊に、気持ちをぶつけ湊の背中に縋る。
震える私の体を、湊はただ優しく抱きしめ背中をさすってくれていた。
温かい手。
湊から伝わる、優しい温もりと愛情。
安心出来るこの手に、守られているんだよね。
「星南。
星南は、星南のペースでいいんだ。
俺に合わせたり、家族にペースを合わせたりしなくていい。
ゆっくり自分の気持ちと向き合って、星南がどうしていきたいのか、考えて決めていいんだ。
俺は、星南を急かしたりしない。
それに、星南のペースに寄り添っていきたい。
きっと、今の星南なら考えることが出来ると思うんだ。
最初に出会った頃よりも、少しづつだけど俺を信じて自分の気持ちをぶつけてくれるようになった。
今まで、誰も信用してこなかった星南に見られたその変化がたまらなく嬉しい。
それに、星南。
星南には、戻る場所がある。
俺は、また星南が塞ぎ込んでしまったとしたら何度もその心に声をかけ続ける。
星南が、壊れてしまわないように俺がこの手で星南を守るから。
可愛い星南の笑顔を見るためなら何だってする。」
心の中にあった不安を、かき消していくように湊の言葉が心の傷に染み渡っていく。
私には、湊がいる。
湊がいてくれれば、どんなに過酷なことも乗り越えられる。
いつでも、湊は私に真剣な気持ちで向き合ってくれるから。
この人は、私を見捨てたりしないって気付いている。
自分を見失わないように、どんな時でも湊は私の行く道を明るく照らしてくれるから。
私の兄が、私へと連絡を取ろうとしてくるのはきっとよっぽど私に何かを伝えなければいけないことなんだと思う。
湊から、兄から連絡があったと聞いて母親か兄のどちらかに何かあったのかもしれないとすぐに分かった。
滅多に会話をしなかった兄と私。
私は、兄には空気のように扱われ母親にはストレスの捌け口になっていたから。
血の繋がりがあったとしても、誰も私を大切に思ってはくれなかった。
一生このまま、過去を引きずりながら生きていかなければいけないのかな…。
離れ離れになったのに、私の心はいつもあの人から支配されている。
その証として、湊から過去のことについて触れられる度、心が大きく動揺して、うるさいくらいに心臓が音を立て加速していく。
それでも…。
もしかしたら、過去と自分を切り離すためにも母親と話すべきなのかもしれないと思う自分もいる。
逃げてばかりではいけないのかもしれない。
逃げた先に、明るい未来なんてきっとないのかもしれない。
私自身が、過去に終止符を打って前を向いて生きていく覚悟を決めないといけないよね。
頼って、甘えてばかりでは湊に負担ばかりをかけてしまう。
湊と幸せになりたいなら、私自身も変わらなければいけないのかもしれない。
だけど…。
怖い。
たまらなく怖い。
母親と会ったら、私はもう今の私でいられない気がして…。
湊と過ごすこの幸せな日々が、失われる気がして。
せっかく、自分の居場所を見つけたのに私は全て失ってしまうのかな…。
「湊…。」
「ん?」
「怖いよ…。」
「…怖い…よな…。」
「たまらなく、不安で怖いよ…。
家族と話をして、自分が自分でなくなることも。
この、幸せを失うことも。」
湊に、気持ちをぶつけ湊の背中に縋る。
震える私の体を、湊はただ優しく抱きしめ背中をさすってくれていた。
温かい手。
湊から伝わる、優しい温もりと愛情。
安心出来るこの手に、守られているんだよね。
「星南。
星南は、星南のペースでいいんだ。
俺に合わせたり、家族にペースを合わせたりしなくていい。
ゆっくり自分の気持ちと向き合って、星南がどうしていきたいのか、考えて決めていいんだ。
俺は、星南を急かしたりしない。
それに、星南のペースに寄り添っていきたい。
きっと、今の星南なら考えることが出来ると思うんだ。
最初に出会った頃よりも、少しづつだけど俺を信じて自分の気持ちをぶつけてくれるようになった。
今まで、誰も信用してこなかった星南に見られたその変化がたまらなく嬉しい。
それに、星南。
星南には、戻る場所がある。
俺は、また星南が塞ぎ込んでしまったとしたら何度もその心に声をかけ続ける。
星南が、壊れてしまわないように俺がこの手で星南を守るから。
可愛い星南の笑顔を見るためなら何だってする。」
心の中にあった不安を、かき消していくように湊の言葉が心の傷に染み渡っていく。
私には、湊がいる。
湊がいてくれれば、どんなに過酷なことも乗り越えられる。
いつでも、湊は私に真剣な気持ちで向き合ってくれるから。
この人は、私を見捨てたりしないって気付いている。
自分を見失わないように、どんな時でも湊は私の行く道を明るく照らしてくれるから。