金木犀
ーside 湊ー
泣き崩れる星南を、俺はただ抱きしめることしかできなかった。
それと同時に、激しい後悔が俺を襲っていた。
深刻で、あまりにも身勝手な話。
育児放棄をした挙句、自分の命を守るために星南に助けを求めている。
高校生の星南にとって、あまりにも残酷な現実。
受け入れられるわけがない。
あれだけ感情的になっていたんだ。
受け入れろという方が無理がある。
「ごめん…星南。」
「…えっ?」
運転席から、身を乗り出し震える星南を再び抱きしめた。
「…俺が前もって、星南の兄に用件を聞いておけば良かった。
俺の言葉で、星南は兄と会う決意をしてくれたのにな…。
前もって聞いて、星南に話をしてから会わせるべきだったんだ…」
話を聞いてからでは遅いけど…
起こってしまった現実は、変えられない。
星南は、腕の中で首を横に降っていた。
「ちがう…
湊が、いてくれなかったら私今どうなっているのか分からない…。」
「星南…」
これは、俺が決めていいのだろうか。
今の星南を見る限り、この移植への同意書はなかったことにした方がいい。
ただでさえ病気を背負っているんだから。
それに、身体だって弱い。
それになにより…
こんなに小さい身体に、大きなリスクを背負わせたくない。
手術に耐えきれる身体ではないからこそ、俺は星南に移植を受けてほしくはない。
星南を失いたくない。
「…湊?」
「失いたくないんだ。星南を。」
「…えっ?」
もしかしたら、星南の中で僅かに母親を思う気持ちがあるのかもしれない。
俺が、星南を失いたくないと思うように星南も心のどこかで母親を失いたくないという気持ちが残っているのかもしれない。
「…だけどな、俺は星南に後悔しないように生きてほしいとも思っているんだ。」
だからこそ、あまりにも残酷な現実であったとしても星南にはよく考えてほしい。
考えて欲しいと思うけど…
「凑…」
「ん?」
「…今は考えられない。
考えたくない。」
星南は小さい身体を震わせながら、必死に声を振り絞ったようにそう答えた。
「今は、何も考えなくていい。
俺はいつだって星南に心のまま生きて欲しいと思う。
俺は、いつだって星南の味方でいるから。
どんな答えを出したとしても俺の気持ちは変わらない。
何も変わらず、昔と同じまま星南を愛するよ。」
もし、星南がこの同意書を蹴って母親の命から背を向けたとしても、少しでも母親のことを考え、自分の気持ちと向き合った星南を誇らしく思う。
例え、産みの親だったとしても星南に対して愛情を注がなかっわたわけで。
俺の言葉を聞いて、少し安心したのか星南は涙を自分で拭っていた。
泣き崩れる星南を、俺はただ抱きしめることしかできなかった。
それと同時に、激しい後悔が俺を襲っていた。
深刻で、あまりにも身勝手な話。
育児放棄をした挙句、自分の命を守るために星南に助けを求めている。
高校生の星南にとって、あまりにも残酷な現実。
受け入れられるわけがない。
あれだけ感情的になっていたんだ。
受け入れろという方が無理がある。
「ごめん…星南。」
「…えっ?」
運転席から、身を乗り出し震える星南を再び抱きしめた。
「…俺が前もって、星南の兄に用件を聞いておけば良かった。
俺の言葉で、星南は兄と会う決意をしてくれたのにな…。
前もって聞いて、星南に話をしてから会わせるべきだったんだ…」
話を聞いてからでは遅いけど…
起こってしまった現実は、変えられない。
星南は、腕の中で首を横に降っていた。
「ちがう…
湊が、いてくれなかったら私今どうなっているのか分からない…。」
「星南…」
これは、俺が決めていいのだろうか。
今の星南を見る限り、この移植への同意書はなかったことにした方がいい。
ただでさえ病気を背負っているんだから。
それに、身体だって弱い。
それになにより…
こんなに小さい身体に、大きなリスクを背負わせたくない。
手術に耐えきれる身体ではないからこそ、俺は星南に移植を受けてほしくはない。
星南を失いたくない。
「…湊?」
「失いたくないんだ。星南を。」
「…えっ?」
もしかしたら、星南の中で僅かに母親を思う気持ちがあるのかもしれない。
俺が、星南を失いたくないと思うように星南も心のどこかで母親を失いたくないという気持ちが残っているのかもしれない。
「…だけどな、俺は星南に後悔しないように生きてほしいとも思っているんだ。」
だからこそ、あまりにも残酷な現実であったとしても星南にはよく考えてほしい。
考えて欲しいと思うけど…
「凑…」
「ん?」
「…今は考えられない。
考えたくない。」
星南は小さい身体を震わせながら、必死に声を振り絞ったようにそう答えた。
「今は、何も考えなくていい。
俺はいつだって星南に心のまま生きて欲しいと思う。
俺は、いつだって星南の味方でいるから。
どんな答えを出したとしても俺の気持ちは変わらない。
何も変わらず、昔と同じまま星南を愛するよ。」
もし、星南がこの同意書を蹴って母親の命から背を向けたとしても、少しでも母親のことを考え、自分の気持ちと向き合った星南を誇らしく思う。
例え、産みの親だったとしても星南に対して愛情を注がなかっわたわけで。
俺の言葉を聞いて、少し安心したのか星南は涙を自分で拭っていた。