金木犀
ーside 星南ー
兄と再開してから1ヶ月。
何度考えても辿り着く答えはたった1つだった。
今は、自分の命を大切にしたい。
手術をしなくてもいい身体に傷をつけてまで、酷い言葉しか向けてくれなかった母親を救いたいと思えなかった。
「星南。」
湊は、あの日の出来事以来夜勤の仕事を入れることは無かった。
学校の送り迎えもずっとしてくれていて、私から片時も離れることはなく一緒にいてくれた。
湊は、私が1人でいることが不安みたいで、1人にしておきたくないと話してくれた。
私も正直、1人でいたくなかった。
自分の意思とは反対に、変な気を起こさないか。
考えてる時間が苦しくて仕方なかった。
「湊。話してもいい?」
意を決して、湊にそう話していた。
家事をしていた湊は手を止めて、私の隣に座ってくれた。
「隣同士で大丈夫か?」
「…湊。」
本当は、膝の上に乗せて欲しい。
優しく抱きしめて聞いて欲しい。
それが本心だけど、そこまで甘えていいのか分からなかった。
「本当…星南は素直じゃないな。」
「えっ?」
聞き返す間もなく、私は気づいたら湊の膝の上に乗せられ向かい合うように抱きしめられていた。
「本当はこうして話がしたいんだろう?」
「湊…
私、あの日からずっと考えてた。
だけど、やっぱり移植なんて受けたくない。
私、自分が親不孝なことしてるって分かってる。
産みの親に酷いことを言ってるって分かってる。
それでも、こういう時だけ私に助けを求めるなんて酷いよ…
私、そんなに大人になんてなれない。
だから…
移植は受けない。」
「星南…。
ありがとう。」
「えっ?」
湊の思いもよらない言葉に、体を離し湊を見つめていた。
「俺さ、星南の母親のことはよく分からない。
星南が母親からされてきたことも想像できない。
だけど、星南。
星南と出会った時、お前の瞳はこの世の全てのものを否定するかのような、愛情を知らない瞳をしていた。
星南の瞳を見て、他人を信用出来なかった星南のそばにいてどれだけ星南が苦しんできたのか分かったんだ。
母親や、家族の愛情を受けられていたら星南はきっと苦しんでいなかった。
こんなこと、俺の口から言うのもどうかと思うけど。
星南の出した決断は、俺は間違っていないと思う。
俺も、そこまで割り切ることができない。
そんなできた人間じゃないから。
今、抱きしめてるこの温もりを手離したくない。
星南に、これ以上大きなリスクを背負わせたくないんだ。」
今まで見たことの無い切ない湊の表情。
そんな表情に、少しだけ胸が痛み自分の中で湊が大切な存在になっていたことに気づいた。
「湊…」
湊の背中に腕を回すと、それに答えるように湊は強く抱きしめてくれた。
兄と再開してから1ヶ月。
何度考えても辿り着く答えはたった1つだった。
今は、自分の命を大切にしたい。
手術をしなくてもいい身体に傷をつけてまで、酷い言葉しか向けてくれなかった母親を救いたいと思えなかった。
「星南。」
湊は、あの日の出来事以来夜勤の仕事を入れることは無かった。
学校の送り迎えもずっとしてくれていて、私から片時も離れることはなく一緒にいてくれた。
湊は、私が1人でいることが不安みたいで、1人にしておきたくないと話してくれた。
私も正直、1人でいたくなかった。
自分の意思とは反対に、変な気を起こさないか。
考えてる時間が苦しくて仕方なかった。
「湊。話してもいい?」
意を決して、湊にそう話していた。
家事をしていた湊は手を止めて、私の隣に座ってくれた。
「隣同士で大丈夫か?」
「…湊。」
本当は、膝の上に乗せて欲しい。
優しく抱きしめて聞いて欲しい。
それが本心だけど、そこまで甘えていいのか分からなかった。
「本当…星南は素直じゃないな。」
「えっ?」
聞き返す間もなく、私は気づいたら湊の膝の上に乗せられ向かい合うように抱きしめられていた。
「本当はこうして話がしたいんだろう?」
「湊…
私、あの日からずっと考えてた。
だけど、やっぱり移植なんて受けたくない。
私、自分が親不孝なことしてるって分かってる。
産みの親に酷いことを言ってるって分かってる。
それでも、こういう時だけ私に助けを求めるなんて酷いよ…
私、そんなに大人になんてなれない。
だから…
移植は受けない。」
「星南…。
ありがとう。」
「えっ?」
湊の思いもよらない言葉に、体を離し湊を見つめていた。
「俺さ、星南の母親のことはよく分からない。
星南が母親からされてきたことも想像できない。
だけど、星南。
星南と出会った時、お前の瞳はこの世の全てのものを否定するかのような、愛情を知らない瞳をしていた。
星南の瞳を見て、他人を信用出来なかった星南のそばにいてどれだけ星南が苦しんできたのか分かったんだ。
母親や、家族の愛情を受けられていたら星南はきっと苦しんでいなかった。
こんなこと、俺の口から言うのもどうかと思うけど。
星南の出した決断は、俺は間違っていないと思う。
俺も、そこまで割り切ることができない。
そんなできた人間じゃないから。
今、抱きしめてるこの温もりを手離したくない。
星南に、これ以上大きなリスクを背負わせたくないんだ。」
今まで見たことの無い切ない湊の表情。
そんな表情に、少しだけ胸が痛み自分の中で湊が大切な存在になっていたことに気づいた。
「湊…」
湊の背中に腕を回すと、それに答えるように湊は強く抱きしめてくれた。