金木犀
暗闇の中、ベッドの軋む音と2人の吐息が静かな部屋の中に響きわたる。
自分でも、聞いたことの無い甘い声におかしくなりそうだった。
それでも、声が我慢できないわけで。
こんな感覚、初めてだった。
今まで、色んな男に抱かれてきた。
こんなに優しく抱かれるのは初めてで、自分でも驚くくらいに湊の触れる手が心地よかった。
温かくて、優しくて。
曇りのない真っ直ぐに見つめる瞳が、私の冷えきった心が溶かされていくような気がしていた。
「大丈夫か?
身体…辛くないか?」
「…んっ…」
そんな問い掛けにすら、まともに反応出来ず頭の中が段々と白くなっていく。
悔しいけど、この人上手い…。
触れる指先から、唇も何もかも全てが気持ち良くて。
この人から与えられる刺激を、ただただ受け止めていた。
「明日海…
可愛いな。」
あまりにも切ない声。
あまりにも心地のいい刺激。
その言葉を最後に、私は意識を失っていた。