こんな恋の話
――やっぱり優太ってすごいわ…。


スコアボードをゴロゴロ引っ張りながら、隣で笑顔を振りまき手をギャラリーに振り、『並木くーん!』と女のコ達に手を振り返されている優太を、未散は半分尊敬の眼差しで見下ろしていた。 


今からバスケ部は新入生歓迎の男女混合の練習試合を始めるのだが、いつどこでその話を聞いたのか、体育館の観客席にはありえないくらい人がごった返していた。 


その原因を作ったのは、この優太め、である。 


「優太っていつの間にこんなに有名人になってるの?」 


「…知らん」 


「こんなことして先輩達は大丈夫なの?」 


「…ってより、先輩達が『やれ』っていうからやってるだけ」 


そう未散に返しながら優太はまた笑顔で手を振る。 


中学のときもそうだったのだが、どうも世の女性達には優太のルックスは受けがいい。 


未散が優太を男として見れない原因にもなっているが、見た目の上での唯一の欠点は「ど」がつくくらいチビである事ぐらいか。いまだに身長は158センチだし。 


――しかしよくもまあ、こんなに優太一人に女のコばっかり集まるもんだ。 


ボードを出し終わり、今度はボールカゴを倉庫に取りに行きながら眺めていた未散だが、沢山の女のコ達の群れの中に衣を見つけて硬直した。
< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop