こんな恋の話
優太は相変わらずファンサービスを続けている。 


それを見ていた衣は今にも泣きそうな表情をしている。 


すぐ隣にいた未散には作り笑顔で手を振ってくれたが、すぐに限界が来て未散に背を向け始めていた。 


――まずい、優太、気づいてない…。 


「優太っ、愛想振りまくのやめなっ!」 


未散は手を振るため挙げていた優太の腕を強引に下ろした。 


女のコ達からは「やだあ」「ちょっとなによ、あのデカ女!」とブーイングモードが出始める。 


「な、なにすんだよ!?」 


不意をつかれた優太は、びっくりして未散を見る。 


「衣が来てたんだってばっ!」 


ほらあそこ!と未散はあごで衣がいたところを指す。 


しかし、そこにはもう、衣は人ごみに紛れて消えていた。 


――嘘だろ…。 


優太の表情からも笑顔が消える。 


「せ、先輩、あと何分で試合始めますかっ?!」 


優太は焦り顔で漫談で盛り上がっている先輩達の輪に入る。 


「あぁ?…おっと、もうこんな時間か。そろそろやるか。…どうした並木、顔真っ青だぞ」 


部長の小田佳佑が優太に答える。 


「す、すんません、ちょ、ちょっとトイレ!!」 


佳佑の言葉を半分聞いたかどうかのところで優太は衣を追いかけるため走り出した。 


「わ、私も行って来ます!!」 


これはまずい、と思った未散も優太の後を追いかける。 


おおおお、随分我慢してたんだなあ、と佳佑は未散と優太の猛ダッシュを見て呑気に言いながら「よーし始めるぞ」と部員達に声をかけた。 
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