憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
私達のプライベート空間であるこの階の下にあるのは、陛下の表の執務室とその補佐兼軍司令である王弟ジェイドの執務室と休息部屋。

もちろんジェイドには自分の宮殿がある。しかしどうやら、彼はその行き帰りの時間が煩わしく、一応王族であるため警護を手配しなければならないのも面倒な上無駄だと考えたらしい。生活のほとんどをこの王宮で過ごすことにしているのだ。


その部屋がまさか、私の寝室の真下!?


「アルマは?」

何の違和感もなく、そこから現れた騎士服に身を包んだジェイドは、陛下の艶かしいお姿に眉の一つも動かさず、寝室の中を見回して、寝台に座る私に目を止めると、すこし緊張したように頬を絞めた。


「とりあえず、大まかな説明はしたよ。あとは、お前との事だけだ」

化粧机の下を何やらゴソゴソいじりながら陛下は簡単にここまでの事を話す。

何があるのか良くわからないが、パタンと、隠し扉が閉まり、また元の床に戻った。

化粧台に開閉ボタンか何かがあるらしい

なんだかもう色々ついていけない。


「そうか」

しかし当のジェイドは、全てが予定通りだなとでも言うように頷いて。

寝台脇の椅子を片手で掴むと、くるりと向きを変えて、寝台に座る私と向き合うように、どかりと座った。


「アルマ」

「はい、、、」

陛下と同じ色のグリーンの瞳が、私をじっと見つめる。

そこには、先ほど別れ際に子供っぽい喧嘩を繰り広げた、あのジェイドはいなくて。

同じ色なのに、陛下と比べて、緊張を含む中に力強い色を感じる。私もつられて緊張して、胸の前でギュッと手を握る。

「お前が、昔からユーリを慕っている事は知っている。今すぐにそんな気分にならないのもわかっている。だができる事なら、俺の子どもを産んでほしい。ユーリの子供として。」

凛とした、良く通る声だった。
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