憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
私の頭は混乱状態だった。
昔から大好きだった殿方に嫁いで、いざ初夜!と思ったら、その愛しい旦那様は実は女性で、かわりに弟の子どもを産んでくれと言われる
頭パンクする。
むしろ倒れないだけ褒めてほしいくらいだ。
いっそ倒れた方が楽なのかもしれない。
しかし悲しいことに意外と私、メンタルが頑丈らしい
驚きつつも頭の片隅では、色んな事を考えていた。
陛下やジェイドは、出来たらでいい、無理強いはしないと言ってくれているが
そんな事はあり得ない事も私は理解できている。
もし私と陛下の間に子供ができなければ、陛下は公妃を持つことになる
そうなればバランスを考えて革新派の家から然るべき令嬢が選ばれるだろう。
公妃に陛下の性別が知れてしまえば、革新派には格好の餌だ。
そしてもし、公妃を娶らなくて済んだとしても、陛下に子供がいなければ、次の王位は革新派の息のかかる王太子殿下だ。
そうなればまた革新派の力を強めてしまう。
私が陛下の子どもを生まないことなど、あり得ないのだ。
できれば、無理強いはしないなどと言うのは、彼等の優しさから出ている言葉であって、彼等だってわかっている。
私はジェイドの子を産まねばならない。
絶対に、、、。
「私は少し、外そうか」
私とジェイドが声もなく見つめ合うのを見ていた陛下が、静かな声でそう言って。
私はリビングにいるから何かあったらすぐに呼んでと、着てきたローブを纏って出て行った。
「驚いだだろう」
リビングへの扉が閉まると、ジェイドが窺うように私の顔を覗き込んだ。
口調はいつもの彼にもどっていて、私もほっと少しだけ緊張を説いた。
「えぇ、もう頭の中ぐちゃぐちゃだわ。」
「すまない、本当は結婚前に伝えたかったんだ。でももしそれを理由にアルマが断ったら、俺たちは秘密を知ってしまったお前を消さなければならない」
婚姻が整うまで黙っていたのは汚い手だったとは重々承知していると、彼は顔を歪ませている。
私だってこのやり方が彼等の本意ではない事くらいはわかっている。
そんな手を喜んで使う人たちではない
だからこそ、思いのままに彼等を詰ることなんて出来ない。
「陛下は私の初恋で、ずっと好きな方だった。この方以外考えられないと、恥ずかしいけどずっと思ってたの」
私の言葉にジェイドは、一瞬だけ眉を寄せ、そして膝に乗せた拳をギュッと力強く握って声を絞り出した。
「あぁ、ずっと近くで見てきた、知ってるよ」
「今日私は、人生最大の失恋をしたみたい」
今までふわふわとしていたけれど、言葉に出すと、一気に現実がやってきて、息が詰まって、目の奥が熱くなって涙がつっと頬を伝った。
ジェイドは何も言わずに、私を見ていた。
静かな瞳で。
「好きだったのよ、本当に。陛下のこと、男性として」
一度口にしたら、堰を切ったように、言葉が溢れてきてしまう。
我慢してたのに、だめだとわかっているのに
こんな姿、王妃として相応しくない
泣き止まなければ、そう思えば思うほど、涙が溢れて嗚咽が漏れる。
不意にふわりと暖かいものが、すっぽりと私を包んだ。
温かくて。硬い感触は
「今は我慢しなくていい。王妃でもないただのアルマでいい。ユーリには聞こえないから、好きなだけ文句垂れておけ!」
ぶっきら棒で少し乱暴なジェイドがいつのまにか隣に座り、私を抱き込んでいる。
先程の陛下とは違う、厚いくて硬い身体に少し高い体温は、はじめての男性の身体なのに何故かとても私を安心させた。