憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
「なぁ、アルマは本当にこれでいいのか?」
ユーリ様とジフロードがお部屋に下がって行ったのを見送って、ソファに身を沈めると、隣に座っていたジェイドが低い声で聞いてくる。彼の言いたい意味が分からなくて、私は首を傾けた。
「ユーリの腹の子がもし男だったら、次の王になるだろう。でもその血筋にお前の血は入らないのだぞ?」
どこか苛立ったように「それでいいのか?」と聞かれて、あぁ、なるほどと理解する。
口調こそ怒っているが、ジェイドは優しい。私がこの婚姻を強いられて得られるメリットは、次世代の王家に私の血を残せることでしかない。それが政略結婚の大きな目的でもあるのだから、それはそうだろう。
それなのにそれすらも取り上げられるという事に納得できるのか?と彼は問うているのだ。
思わず口元が緩んで、くすりと笑みが漏れる。
そんな私にジェイドは「笑いごとなものか」と怪訝そうに眉を寄せるけど、私の考えはすでに別の次元にあることを彼は分かっていないのだ。
「ユーリ様の子供は配偶者である私の子供でもあるのよ。血筋なんてそんなの関係ないわ。」
私の言葉にジェイドが納得いかない様子で首を傾ける。
まぁ、男の人はそうなのだろう。
「私は、ユーリ様を母親にして差し上げたいの。ずっとずっとこの先も女性であることを諦めて、その楽しみさえ知らずに生きていかなければならないのよ?幸運にも愛する方と結ばれてその子供を授かれたのならばそのチャンスを逃してほしくはないわ」
妊娠していると私達にユーリ様が話した時から、私は彼女の様子で分かっていた。だめだと分かっていながら、自身の身体に宿った小さな命を諦めたくない。できる事なら産みたいと思っていただろう。
そして腹の子供の父親であるジフロードが随分と落ち込んでいたのをみて、わずかに傷ついていたことも。
二人が消えて行ったユーリ様のお部屋にちらりと視線を送る。二人が今どのような話をしているかは分からない。
もしかするとこれを機に二人が別れを選択することになるかもしれないけれど、それは二人が納得した上で下す決断であるから、部外者の私がとやかく言えることではない。
でも願わくば、ジフロードにはユーリ様の支えになってあげてほしい。
そこまで考えて、ふふっとまた笑みが漏れた。
男だったユーリ様を確かに私はとても愛していたけれど、女性のユーリ様も変わらず愛しているのだ。
もうそれは恋心という名前ではないけれど、その人の幸運を祈って、そのために手を貸してあげたい。守ってあげたいというのは立派な愛のカタチであるだろう。
「血なんてどうでもいいのよ。そんなもの目には見えないのだから。私達夫婦のもとに命がやってきた…それでいいでしょ?」
私の言葉に、ジェイドが息を詰まらせて、わずかに目を伏せた。
「お前が、それでいいのなら俺はいいんだ。だが無理はするな!あまり物わかりのいい顔をしていなくていいんだぞ?」
まだどこか腑に落ちないという顔の彼の言葉に小さく頷く。
「大丈夫。何かあった時はちゃんとジェイドに当たり散らすから」
「そうしてくれ。変に堪えられる方が心配だからな」
冗談めかした言葉で互いに肩を竦める。
胸の奥に痞えていたものがすっと流れていくような、肩の荷が降りたような気がした。
不思議ね。ジェイドとは顔を見れば喧嘩ばかりだったのに、今こうして同じものに向かっていると随分と彼が頼もしく思えてくるのだ。
互いに大人になり成長をしたからなのか、それとも同じものを守ろうとする連帯感がそうさせるのか…。
もしくは…。
「ありがとう、心配してくれて」
不意に頭に浮かんだ考えに、まだちょっと違うかなぁと苦笑した
ユーリ様とジフロードがお部屋に下がって行ったのを見送って、ソファに身を沈めると、隣に座っていたジェイドが低い声で聞いてくる。彼の言いたい意味が分からなくて、私は首を傾けた。
「ユーリの腹の子がもし男だったら、次の王になるだろう。でもその血筋にお前の血は入らないのだぞ?」
どこか苛立ったように「それでいいのか?」と聞かれて、あぁ、なるほどと理解する。
口調こそ怒っているが、ジェイドは優しい。私がこの婚姻を強いられて得られるメリットは、次世代の王家に私の血を残せることでしかない。それが政略結婚の大きな目的でもあるのだから、それはそうだろう。
それなのにそれすらも取り上げられるという事に納得できるのか?と彼は問うているのだ。
思わず口元が緩んで、くすりと笑みが漏れる。
そんな私にジェイドは「笑いごとなものか」と怪訝そうに眉を寄せるけど、私の考えはすでに別の次元にあることを彼は分かっていないのだ。
「ユーリ様の子供は配偶者である私の子供でもあるのよ。血筋なんてそんなの関係ないわ。」
私の言葉にジェイドが納得いかない様子で首を傾ける。
まぁ、男の人はそうなのだろう。
「私は、ユーリ様を母親にして差し上げたいの。ずっとずっとこの先も女性であることを諦めて、その楽しみさえ知らずに生きていかなければならないのよ?幸運にも愛する方と結ばれてその子供を授かれたのならばそのチャンスを逃してほしくはないわ」
妊娠していると私達にユーリ様が話した時から、私は彼女の様子で分かっていた。だめだと分かっていながら、自身の身体に宿った小さな命を諦めたくない。できる事なら産みたいと思っていただろう。
そして腹の子供の父親であるジフロードが随分と落ち込んでいたのをみて、わずかに傷ついていたことも。
二人が消えて行ったユーリ様のお部屋にちらりと視線を送る。二人が今どのような話をしているかは分からない。
もしかするとこれを機に二人が別れを選択することになるかもしれないけれど、それは二人が納得した上で下す決断であるから、部外者の私がとやかく言えることではない。
でも願わくば、ジフロードにはユーリ様の支えになってあげてほしい。
そこまで考えて、ふふっとまた笑みが漏れた。
男だったユーリ様を確かに私はとても愛していたけれど、女性のユーリ様も変わらず愛しているのだ。
もうそれは恋心という名前ではないけれど、その人の幸運を祈って、そのために手を貸してあげたい。守ってあげたいというのは立派な愛のカタチであるだろう。
「血なんてどうでもいいのよ。そんなもの目には見えないのだから。私達夫婦のもとに命がやってきた…それでいいでしょ?」
私の言葉に、ジェイドが息を詰まらせて、わずかに目を伏せた。
「お前が、それでいいのなら俺はいいんだ。だが無理はするな!あまり物わかりのいい顔をしていなくていいんだぞ?」
まだどこか腑に落ちないという顔の彼の言葉に小さく頷く。
「大丈夫。何かあった時はちゃんとジェイドに当たり散らすから」
「そうしてくれ。変に堪えられる方が心配だからな」
冗談めかした言葉で互いに肩を竦める。
胸の奥に痞えていたものがすっと流れていくような、肩の荷が降りたような気がした。
不思議ね。ジェイドとは顔を見れば喧嘩ばかりだったのに、今こうして同じものに向かっていると随分と彼が頼もしく思えてくるのだ。
互いに大人になり成長をしたからなのか、それとも同じものを守ろうとする連帯感がそうさせるのか…。
もしくは…。
「ありがとう、心配してくれて」
不意に頭に浮かんだ考えに、まだちょっと違うかなぁと苦笑した