憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
恋をさせてしまえばいい。突拍子もなく親友から出た提案が頭の中をグルグルと回った。
クリスティンとヴィゴを見送り、私は頭の中を整理しながら、応接の間のある塔から居住区のある塔へ向けて歩く。
「あれ?アルマ?どうしたんだ?」
居住区ひとつ手前の階まで階段を登った所で、自身の執務室から出てきたジェイドとバッタリ遭遇する。
なんだか彼とは、よくこの辺りで会う。
すこしだけ微笑んで肩をすくめる。
「クリスティンが来ていたの。お見送りに行って戻ったところよ」
そう伝えれば、ジェイドは「あぁ、今日だったのか」と笑って、長い脚を使って私の隣までやってくると、手を差し出した。
「大切なお身体ですから、転んだりしたら大変だ。兄上のお部屋の前までお送りしますよ」
と、えらくよそ行きの態度で微笑むのだ。
よく考えてればこのエリアはほぼ居住区ではあるのだが、重鎮の出入りがあったり、何も知らない侍女達がウロウロしているのだ。
視線でその意を理解したとやり取りすると、私は彼が差し出した手に手を重ねた。
「そろそろ、ユーリ様も休憩の頃だし。良かったら殿下も一緒にお茶をどうかしら?」
そう誘えば、彼の端正な顔が甘く微笑む。
「では、ご一緒させていただきましょう」
二人で階段を登りきり、リビングルームへ入る。ユーリ様のお姿はなくて、ジフロードもいない。恐らく2人でお部屋か執務室にいるのだろう。
アイリーンがお茶の用意をして持ってきてくれるまで、私達はいつものソファに腰かける。
「クリスティンと会うのは久しぶりか?」
すっかりくつろいだ様子のジェイドに聞かれて、私は頷く。
「そうなの!ほら彼女出産したばかりだし」
「あぁ、そうか。そう言えば結婚式の頃大きな腹で会いにきていたな。久しぶりに会えて楽しめたか?」
「うん、久しぶりだしね!色んな話が聞けて良かったわ」
そう言って、クリスティンとの話を思い出して…彼女の提案を思い出して首を傾けた。
「ん?何だ?浮かない顔して」
ジェイドが窺うように見てくるので肩をすくめる。
ちょうど、アイリーンがお茶を持ってきたところだったので、引き取って下がらせた。
「公妃の話が、随分と貴族の間にも広がっているのね?」
そう話せば、ジェイドが眉間に皺を寄せて頷く。
「あぁ、どうやら革新派の連中が吹聴しているらしい。何かクリスティンから聞いたのか?」
彼の問いに肩を竦める。
「何も!むしろ聞かれたわ。本気?って。」
「だろうな。普通の感覚なら妻の妊娠中に公妃を娶るなんてあり得ないだろう」
「でもレイリーとカナック侯爵はそれなりに本気みたいだしね。」
茶葉をポットに入れてお湯を注ぎながら困ったように呟けば、ジェイドも「確かになぁ」と天を仰ぐ。
「どこでどう勘違いしているのか分からないが、奴らはこの妊娠をチャンスだと思っているみたいだしな。まぁ、おそらく少し前にチェルシーが接触して来たところを思うと、あちらの思惑だろうが」
それは私も同意見だ。
恐らくチェルシー妃は私を揺さぶって疑心暗鬼にさせたかったのだ。そしてそのタイミングでレイリーをけしかけて、私とユーリ様の仲に波風を立てようとした。でもその全てが、今のところ何の功も成していないことを彼女達は知らない。だって私とユーリ様に男女の関係は無いし、なんなら実際に妊娠しているのはユーリ様なのだから。
「でも、このまま好きにさせておくのは不味い気もするのよね。何か良い手は無いかと思うのだけど、クリスティンたらレイリーに恋をさせたらどうかって言うのよ?」
そんなの出来っこないでしょ?と半ば冗談まじりに笑って、紅茶をカップに淹れて行く。
「恋…なぁ」
ジェイドが天を仰いて、長い脚を組む。その前にソーサーに乗せたカップを置いて、私も背もたれに背をつける。
「意外と、アリな作戦かもな」
「え?」
ポツリとつぶやいたジェイドの言葉に、私は首を傾ける。
「クリスティン…レイリーの事をいくらか知っているのだろうな。もしかしたら、レイリーは外せるかもしれん」
「でもお相手が…」
侯爵家の令嬢のお相手なんてそう簡単に見つかるものでもないだろうに…まして彼女の年齢も年齢だ。そんな条件の整った独身の貴族男性を見つける方が難しい。
そう反論しようとした私の顔を見て、ジェイドがニヤリと、いたずらめいた笑みを浮かべた。
「いや、やってみる価値はある。この件は俺に任せろ」
昔と同じ悪い事を企んでいる時の悪ガキな笑みに、私は一抹の不安を感じながら、恐る恐る頷いた。
クリスティンとヴィゴを見送り、私は頭の中を整理しながら、応接の間のある塔から居住区のある塔へ向けて歩く。
「あれ?アルマ?どうしたんだ?」
居住区ひとつ手前の階まで階段を登った所で、自身の執務室から出てきたジェイドとバッタリ遭遇する。
なんだか彼とは、よくこの辺りで会う。
すこしだけ微笑んで肩をすくめる。
「クリスティンが来ていたの。お見送りに行って戻ったところよ」
そう伝えれば、ジェイドは「あぁ、今日だったのか」と笑って、長い脚を使って私の隣までやってくると、手を差し出した。
「大切なお身体ですから、転んだりしたら大変だ。兄上のお部屋の前までお送りしますよ」
と、えらくよそ行きの態度で微笑むのだ。
よく考えてればこのエリアはほぼ居住区ではあるのだが、重鎮の出入りがあったり、何も知らない侍女達がウロウロしているのだ。
視線でその意を理解したとやり取りすると、私は彼が差し出した手に手を重ねた。
「そろそろ、ユーリ様も休憩の頃だし。良かったら殿下も一緒にお茶をどうかしら?」
そう誘えば、彼の端正な顔が甘く微笑む。
「では、ご一緒させていただきましょう」
二人で階段を登りきり、リビングルームへ入る。ユーリ様のお姿はなくて、ジフロードもいない。恐らく2人でお部屋か執務室にいるのだろう。
アイリーンがお茶の用意をして持ってきてくれるまで、私達はいつものソファに腰かける。
「クリスティンと会うのは久しぶりか?」
すっかりくつろいだ様子のジェイドに聞かれて、私は頷く。
「そうなの!ほら彼女出産したばかりだし」
「あぁ、そうか。そう言えば結婚式の頃大きな腹で会いにきていたな。久しぶりに会えて楽しめたか?」
「うん、久しぶりだしね!色んな話が聞けて良かったわ」
そう言って、クリスティンとの話を思い出して…彼女の提案を思い出して首を傾けた。
「ん?何だ?浮かない顔して」
ジェイドが窺うように見てくるので肩をすくめる。
ちょうど、アイリーンがお茶を持ってきたところだったので、引き取って下がらせた。
「公妃の話が、随分と貴族の間にも広がっているのね?」
そう話せば、ジェイドが眉間に皺を寄せて頷く。
「あぁ、どうやら革新派の連中が吹聴しているらしい。何かクリスティンから聞いたのか?」
彼の問いに肩を竦める。
「何も!むしろ聞かれたわ。本気?って。」
「だろうな。普通の感覚なら妻の妊娠中に公妃を娶るなんてあり得ないだろう」
「でもレイリーとカナック侯爵はそれなりに本気みたいだしね。」
茶葉をポットに入れてお湯を注ぎながら困ったように呟けば、ジェイドも「確かになぁ」と天を仰ぐ。
「どこでどう勘違いしているのか分からないが、奴らはこの妊娠をチャンスだと思っているみたいだしな。まぁ、おそらく少し前にチェルシーが接触して来たところを思うと、あちらの思惑だろうが」
それは私も同意見だ。
恐らくチェルシー妃は私を揺さぶって疑心暗鬼にさせたかったのだ。そしてそのタイミングでレイリーをけしかけて、私とユーリ様の仲に波風を立てようとした。でもその全てが、今のところ何の功も成していないことを彼女達は知らない。だって私とユーリ様に男女の関係は無いし、なんなら実際に妊娠しているのはユーリ様なのだから。
「でも、このまま好きにさせておくのは不味い気もするのよね。何か良い手は無いかと思うのだけど、クリスティンたらレイリーに恋をさせたらどうかって言うのよ?」
そんなの出来っこないでしょ?と半ば冗談まじりに笑って、紅茶をカップに淹れて行く。
「恋…なぁ」
ジェイドが天を仰いて、長い脚を組む。その前にソーサーに乗せたカップを置いて、私も背もたれに背をつける。
「意外と、アリな作戦かもな」
「え?」
ポツリとつぶやいたジェイドの言葉に、私は首を傾ける。
「クリスティン…レイリーの事をいくらか知っているのだろうな。もしかしたら、レイリーは外せるかもしれん」
「でもお相手が…」
侯爵家の令嬢のお相手なんてそう簡単に見つかるものでもないだろうに…まして彼女の年齢も年齢だ。そんな条件の整った独身の貴族男性を見つける方が難しい。
そう反論しようとした私の顔を見て、ジェイドがニヤリと、いたずらめいた笑みを浮かべた。
「いや、やってみる価値はある。この件は俺に任せろ」
昔と同じ悪い事を企んでいる時の悪ガキな笑みに、私は一抹の不安を感じながら、恐る恐る頷いた。