憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
エンドルム公爵家のディラン・カシールは、ユーリ様とジェイドの幼馴染で、古くから国境線の要所である領地を治める由緒ある名家の子息だ。私自身も幼少の頃に何度か一緒に遊んだ記憶がある。昔の記憶では、寡黙だけれど、何事も静かにコツコツとやるタイプだ。
「なるほどねぇディランかぁ!悪いやつじゃない、しかも国境線の貿易に関わっているし、外国にも出る事が多いな。たしかにレイリーのようなタイプが妻の方が、寡黙な彼には合うかもなぁ。」
レイリーを見送って、自室に戻る道すがら、ユーリ様は感心したように呟く。
「でも彼ってずっと領地にいらっしゃって、あまり王都には来られない筈じゃぁ?」
とても真面目な性格の彼らしく、ディランは他の貴族の子息達のように領地を出て王都で社交会に参加して顔をつなぐということにあまり重きを置いていない印象で、そんな彼が王都にいるレイリーとどうして巡り合うことができたのか不思議なのだ。
私の問いに、ユーリ様も確かにねぇと頷いた。
「多分私の推測だけど、ディランももういい年齢だろ?由緒ある公爵家の嫡男で婚約者がいないとなれば、随分と縁談の話も多かったのではないかな?ジェイドと昔から仲がいいから、おそらくあいつはその辺りを利用して焚きつけたんじゃないかと」
「なるほど…」
正直ジェイドとディランが子供の頃のまま仲が良かったと言うのは初耳だった。そうであるなら、きっと私から「レイリーに恋をさせたら」なんて話を聞かされて、瞬時にジェイドには彼の顔が浮かんだのだろう。
「まぁレイリーも由緒ある侯爵家の令嬢だ。国王の公妃よりも、歴史のある公爵位の男に嫁いだ方がいいに決まっている。おそらくカルナック卿も企みはあれどこんな良縁を断ることはできないだろうね」
あいつ上手くやったなぁ~と感心しきりのユーリ様に、私は首を傾ける。
「でもレイリーとディランの好みに合致しなければ話は始まらないですよね?レイリーはあの感じだと成功してると思えますけどディランはどう思っているのでしょうね?」
私の言葉にユーリ様も、「確かにね」と同意する。
「でも、ジェイドがあれだけ自信あり気だってことは恐らく上手くいっているんじゃないかなぁ?アルマ、聞いといてくれる?」
そう言ってユーリ様はどこか含みがある笑みをこちらに向けて、ちょうど執務室前で私たちの戻りを待っていたジフロードの元に小走りで行ってしまった。
ジフロードに「慌てずゆっくりお戻りください」と小言を言われながら部屋に戻っていくユーリ様を見送って、私は少し憂鬱な気分になる。
だって私はてっきりジェイド自身がレイリーを籠絡しようとしているのではないかと馬鹿な勘違いをしていたのだ。冷静になって少し考えればわかる筈なのに。
レイリーのディランに夢中になっている顔を思い出す。
もしかしたら、私も彼女とそう変わらないのかもしれない。冷静ではないし、周りが見えていないのだ。その上、やきもちを焼いて…。
そこまで考えて、両手で顔を覆う。なんて恥ずかしいことをしたのだろう。
しばらくジェイドの顔をまともに見られる気がしない。
恥ずかしさで泣きそうになりながら、人目を憚るように私は自室へ戻ったのだった。
「なるほどねぇディランかぁ!悪いやつじゃない、しかも国境線の貿易に関わっているし、外国にも出る事が多いな。たしかにレイリーのようなタイプが妻の方が、寡黙な彼には合うかもなぁ。」
レイリーを見送って、自室に戻る道すがら、ユーリ様は感心したように呟く。
「でも彼ってずっと領地にいらっしゃって、あまり王都には来られない筈じゃぁ?」
とても真面目な性格の彼らしく、ディランは他の貴族の子息達のように領地を出て王都で社交会に参加して顔をつなぐということにあまり重きを置いていない印象で、そんな彼が王都にいるレイリーとどうして巡り合うことができたのか不思議なのだ。
私の問いに、ユーリ様も確かにねぇと頷いた。
「多分私の推測だけど、ディランももういい年齢だろ?由緒ある公爵家の嫡男で婚約者がいないとなれば、随分と縁談の話も多かったのではないかな?ジェイドと昔から仲がいいから、おそらくあいつはその辺りを利用して焚きつけたんじゃないかと」
「なるほど…」
正直ジェイドとディランが子供の頃のまま仲が良かったと言うのは初耳だった。そうであるなら、きっと私から「レイリーに恋をさせたら」なんて話を聞かされて、瞬時にジェイドには彼の顔が浮かんだのだろう。
「まぁレイリーも由緒ある侯爵家の令嬢だ。国王の公妃よりも、歴史のある公爵位の男に嫁いだ方がいいに決まっている。おそらくカルナック卿も企みはあれどこんな良縁を断ることはできないだろうね」
あいつ上手くやったなぁ~と感心しきりのユーリ様に、私は首を傾ける。
「でもレイリーとディランの好みに合致しなければ話は始まらないですよね?レイリーはあの感じだと成功してると思えますけどディランはどう思っているのでしょうね?」
私の言葉にユーリ様も、「確かにね」と同意する。
「でも、ジェイドがあれだけ自信あり気だってことは恐らく上手くいっているんじゃないかなぁ?アルマ、聞いといてくれる?」
そう言ってユーリ様はどこか含みがある笑みをこちらに向けて、ちょうど執務室前で私たちの戻りを待っていたジフロードの元に小走りで行ってしまった。
ジフロードに「慌てずゆっくりお戻りください」と小言を言われながら部屋に戻っていくユーリ様を見送って、私は少し憂鬱な気分になる。
だって私はてっきりジェイド自身がレイリーを籠絡しようとしているのではないかと馬鹿な勘違いをしていたのだ。冷静になって少し考えればわかる筈なのに。
レイリーのディランに夢中になっている顔を思い出す。
もしかしたら、私も彼女とそう変わらないのかもしれない。冷静ではないし、周りが見えていないのだ。その上、やきもちを焼いて…。
そこまで考えて、両手で顔を覆う。なんて恥ずかしいことをしたのだろう。
しばらくジェイドの顔をまともに見られる気がしない。
恥ずかしさで泣きそうになりながら、人目を憚るように私は自室へ戻ったのだった。