憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
自分のやきもちな言動を思い出して、しばらく自室でジタバタした後、気を取り直して執務をしようと部屋を出た私は、リビングルームに入るなり凍りついた。
「お疲れ様!レイリーどうだった?」
リビングルームのソファに腰掛けてお茶を飲んでいるジェイドに出くわしたのだ。いつもはこんな時間に、この部屋にいる事は少ないのだけれど、恐らく今日はレイリーの訪問日と言うこともあって様子を聞くためにここでお茶をすることにして、私かユーリ様を待っていたのだろう。
逃げたいけど…逃げられない。というよりここで逃げたらますますややこしい。
仕方なく、なんでもないふりを装って私はあえていつものジェイドの隣の席ではなく、向かいの席に座る。
そう私は一国の王妃だ。平常心でやり過ごす事は慣れているはず!
「見事なまでにディランに落ちてたわ、どうやったの?」
挑むようにジェイドを見据えれば、彼は私がどこまで理解しているのか分かったらしい。
ニヤリと悪戯ジェイドの顔で笑った。
「レイリーは昔から思い込むと頑としてしてその道を行くタイプなんだよ!留学もそう、本当なら王妃候補になってもおかしくないのに、デビューもそこそこに外国に出て行ってしまって父親のカルナック卿は頭を抱えていたくらいだ。ずっと勉強一本で、恋愛なんてした事もないから、公妃の件も慣れ親しんだユーリならいいくらいの感覚だったのだろう。そこに声をかける素敵な年上の男がいたら靡いてもおかしくないだろう?」
そう問われ、たしかに今まで社交界に縁のなかったレイリーだったら急に近づいてくる好みの男性がいたらそりゃあ靡くかもしれないけれど、、、
「声をって…ディランから迫ったの?」
なんだか釈然としない私の問いに、ジェイドは軽く笑った。
「ディランとは長い付き合いだからな。ちょうど婚姻の話が殺到していて、どの令嬢を選んだらいいのやらと困っていると聞いたばかりだったんだ。ほら、あいつなかなか王都には出てこないだろう?おそらく寡黙なあいつにはレイリーくらいハキハキしてわかりやすい女の方が向いているだろうし、彼女の経歴には興味を持っていた。だから一度紹介するから会いにきてみろと声をかけてみたんだよ」
それでまんまと王都に誘い出したディランを連日夜会に連れ回して、レイリーと引き合わせたと…どうやらそう言うことらし。
「トルヴィアナ叔父様の誕生日パーティーの時は、ディランがどうしても外せない用事があってな。レイリーも招待を受けていたから、虫除けのためにエスコートをしてやってほしいってディランに頼まれていたんだ」
確かに社交界に今まであまり出ておらず、新顔のレイリーは何かと目立つだろうし、興味を持つ男性もいるだろう。虫除けに第3王子を利用するのはいささか贅沢な気もするが、紹介している手前2人のために一肌脱ごうとするジェイドの気持ちは理解できる。
「それで…二人の進捗状況はどうなの?」
なんだか話が上手く行き過ぎではなだろうか?と呆れながらも問えば、ジェイドは自信満々な様子で軽く笑う。
「順調だよ。そろそろディランが領地に戻らないといけないからな、結婚を申し込むだろうよ。外交を主とするエンドルム公爵家にとっても、カルナック侯爵家にとってもいい話だ」
そう言った彼はカップをソーサーに戻して、どうだ?と言うように意地悪に笑う。
何もかも、ジェイドの思惑通りで腹立たしい。それでもこれで、当面の憂いは無くなったわけで…。
「もっと早く教えてくれてもよかったのに!」
むれてじっとりとジェイドを睨みつける。睨まれたジェイドはそんな事は全く応えてないようで
「すまない。上手く行くか不確定だし、ヤキモチやいてるアルマが可愛くて」
しれっとまた私を狼狽えさせるような事を言うのだ。
顔が赤くなるのを感じて、それを誤魔化すように拗ねたように睨みつける。
それに吹き出した彼が、立ち上がって私のそばまでやってくると、不意に屈んで…額にキスを落とした。
「今のその拗ねた顔も最高に可愛いけどな!」
そう言って笑うと「執務に戻る」と言って軽い足取りで部屋を出ていくのだった。
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