憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
ディランからの結婚の申し込みがあり、受けたという旨の報告の手紙を受けたのは、それから1週間ほど経った頃だった。
驚いた事に手紙は私宛で、父親であるカルナック卿も賛成してくれているとの事だ。
妊娠中の大切な時期にユーリ様との仲に横恋慕するような失礼な事をして申し訳ありませんでした。お2人のように、思い合った夫婦になれるよう努力いたします。と記されているのを見て私は苦笑した。
とりあえずは公妃問題は一旦は落ち着いた形となったらしい。まだユーリ様の産み月までは4ヶ月半ほどある。その間にまだ革新派が動かないとも限らないけれど、あとふた月ほどでユーリ様はお怪我でベッドから動けない状況となる予定なので、どうにかそこまでは逃げ切れるだろう。そう考えると色々と不安要素はまだ残ってはいるものの、どうにかなりそうな気がしてきた。
そう…対外的な事は。
手紙を封筒にしまうと、大きく息を吐く。
問題は私がきちんと私の気持ちと向き合って、ジェイドの気持ちに答える決心をつける事だ。
ユーリ様が妊娠している今、たしかに急いで私がジェイドとどうこうなる必要はない。それでもやはりジェイドと同じように、その状況が必要だから思いを伝えるのではなく。伝えたいから伝える事が出来る今がいいのではないかと思っているのだ。
問題はいつ伝えるのか、と言う事で…モンシェールの日がいいのだろうと思いながらも、週1度あるそのうちのいつすべきかと考えていると、意外とタイミングを逃してズルズル日が経ってしまうのだ。
そんな悶々とした日を過ごす中、私はそれを大いに後悔する問題にぶち当たったのだった。
その日は、週末で昼過ぎに執務を終えて、1人のんびりとお茶をしていた。不意にリビングの外が騒がしい事に気がついて顔を上げて首を傾ける。この部屋のあるフロアは、入る事が許されている者は限られていて、騒がしくなる事など滅多にないのだ。
すぐにその複数の足音がリビングルームにやってくると、ノックの音と共に厳しいお顔付きのユーリ様が顔を出された。そしてその後ろからジフロードと
「王太后様!先王陛下!」
今日訪問の予定の無かった義父母の姿があった。
「あぁ、アルマもいた!ちょうど良かったよ!」
私の顔を見たユーリ様は僅かに頬を緩めると、すぐにご両親にソファを勧め、ご自身は私の隣に座った。ジフロードが、自分の分の椅子を運んできて、ユーリ様の隣に座る。
それと同時に侍女が慌ただしく入室してきて、人数分のティーカップと私が一人で使用していたポットよりも大きな物を持ち込んできた。それをジフロードが引き継いで侍女達を退室させる。
なんだか突然やってきた物々しい雰囲気に私は唖然としながら、わずかに胸を締め付ける不安感を感じつつ黙って見守った。
完全に侍女達が退室するのを見送って、ユーリ様は大きく息を吐いた。
「まずアルマに説明をしておくね」
そう言い置いて、身体を私に向けると意を決したように口を開いた。
「隣国のアルザバルドから、ジェイドを婿に欲しいという打診が来たんだ。」
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