憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
「アルザバルドには行かんと言っているだろう!」
翌日、たまたまジェイドの執務室の前を通りかかろうとすると、彼の執務室から普段聞かないほどに苛立ったジェイドの怒鳴り声が響いてきた。
「しかし殿下!これは国益に関わる事。殿下にとっても悪い話ではありません」
「どうか兄君を、国王陛下を説得なさって…」
「余計なお世話だ!まだ軍部にはやらねばならん事もあるんだ!軍事の面ではこの縁談に国益などない!第一俺は、陛下の決定に従うだけだ!」
「ですが、しかし…」
「出て行け!仕事の邪魔だ!」
そう声が響いて、バタンと扉が開くとジェイドの副官…ジョナサンが2人の中年議員を威嚇するように追い立てて出てきた。
議員達は逃げるように出てくると、その場に唖然と立ち尽くす私の顔を見て、次のターゲットを見つけたとばかりに、狡猾な笑みを浮かべた。
「これは王妃陛下」
そう言って礼を取られて私は、嫌な予感をひしひし感じて後退る。
「ご機嫌よう。ハマル議員、エリオット議員ご苦労様です」
そう言って挨拶だけして去ろうとしたのだが、すぐに進行方向を彼らが連れていた秘書官に塞がれている事に気がつく。
「王妃陛下からも是非国王陛下に進言をお願いいたします!」
-「これは我が国の将来の安寧に関わる事!これからは武ではなく貿易の時代でございます。女性である王妃陛下ならお分かりでございましょう?」
そうして退路を断たれた所で口々に、主張を捲し立てられた私は、ジリジリ後退りながら、彼らに追い詰められていく。
全速力で逃げたい!しかし私は今妊婦のフリをしているわけで、あまり俊敏に動いてはまずい。
「わたくしには、この件は関わりがないので。ご意見を言われても…」
そう何とかやんわり言ってみた所で、バァンとその場に大きな音が響いた。それは、彼等の後方で…私の視線の先。
ジェイドが勢いよく執務室の扉を開いて出てきて、こちらにツカツカと歩いて来たのだ。
そりゃぁもう、かなりのお怒りの顔で。
音の方を恐る恐る振り返った彼らの目に、戦場で英雄とまで言われた彼はどのように映ったのだろう。
「余計な世話だと言ったよな?」
地の底から聞こえてくる様な低い声に、目の前の大の大人の男達が震え上がるのを見た。
「お前達…大事な身体の王妃に負担をおかけして兄上の怒りを買いたいか!?」
そう睨み据えられて、彼等の1人が
「め…滅相もございません!」と泣きそうな声で叫んだ。
そんな彼らに、ジェイドはアゴで階段を指して「とっとと、自分の仕事に戻れ」と凄んだ。
その言葉を聞くや否や、腰を抜かしそうなほどに慌てた2人が書記官達を連れて逃げて行った。それを唖然と見送っていると、深く息を吐いたジェイドが
「巻き込んですまない。部屋まで送るよ」と言って私の手を取ったのだった。
「すまないな、色々とうるさくて」
彼はリビングルームまで私を送ると、申し訳無さそうに詫びた。
別にジェイドが悪いわけでもないし、何なら彼が1番の被害者だろうに…そう思って苦笑して肩をすくめる。
「でもジェイドはいいの?国王になれるチャンスなのよ?」
私の問いに、彼も肩をすくめる。
「国王なんて細やかな仕事、俺に向くと思うか?勘弁してくれ」
「アナタならそう言うと思ったわ」
そうおどけて笑って見せれば、繋いだ手が一層強く握られる。先ほどまでふざけていた彼の表情が真剣な色に変わっていて。
「言っただろう?俺はお前が唯一だ」
そう落ち着いた声で言い聞かせるように言われて…。
「それとも、俺でない方がいいか?」
どこか不安気な最後の言葉に私は首を大きく横に振る。
「ジェイドじゃなきゃ…いやだわ」
しっかりと彼の目を見て言った。ずっといつ言おうかと悩んで…言いたかった言葉だ。
私の言葉に彼が目を見開く。
それににこりと笑ってやると、唐突に手を強く引かれて彼の胸に引き寄せたられた。
ぎゅうっと強く身体を抱きしめられて…。
「はぁ~、くそっ~このタイミングかよ~」
なぜか悔しそうに呟かれた。
「ん?何が?」
訳がわからず、それでも答えるように彼の背に手を回せば、一層強く抱きしめられて。
「なんでもない。とにかく心配するな、大丈夫だから」
そう耳元で低く優しく囁かれた。
翌日、たまたまジェイドの執務室の前を通りかかろうとすると、彼の執務室から普段聞かないほどに苛立ったジェイドの怒鳴り声が響いてきた。
「しかし殿下!これは国益に関わる事。殿下にとっても悪い話ではありません」
「どうか兄君を、国王陛下を説得なさって…」
「余計なお世話だ!まだ軍部にはやらねばならん事もあるんだ!軍事の面ではこの縁談に国益などない!第一俺は、陛下の決定に従うだけだ!」
「ですが、しかし…」
「出て行け!仕事の邪魔だ!」
そう声が響いて、バタンと扉が開くとジェイドの副官…ジョナサンが2人の中年議員を威嚇するように追い立てて出てきた。
議員達は逃げるように出てくると、その場に唖然と立ち尽くす私の顔を見て、次のターゲットを見つけたとばかりに、狡猾な笑みを浮かべた。
「これは王妃陛下」
そう言って礼を取られて私は、嫌な予感をひしひし感じて後退る。
「ご機嫌よう。ハマル議員、エリオット議員ご苦労様です」
そう言って挨拶だけして去ろうとしたのだが、すぐに進行方向を彼らが連れていた秘書官に塞がれている事に気がつく。
「王妃陛下からも是非国王陛下に進言をお願いいたします!」
-「これは我が国の将来の安寧に関わる事!これからは武ではなく貿易の時代でございます。女性である王妃陛下ならお分かりでございましょう?」
そうして退路を断たれた所で口々に、主張を捲し立てられた私は、ジリジリ後退りながら、彼らに追い詰められていく。
全速力で逃げたい!しかし私は今妊婦のフリをしているわけで、あまり俊敏に動いてはまずい。
「わたくしには、この件は関わりがないので。ご意見を言われても…」
そう何とかやんわり言ってみた所で、バァンとその場に大きな音が響いた。それは、彼等の後方で…私の視線の先。
ジェイドが勢いよく執務室の扉を開いて出てきて、こちらにツカツカと歩いて来たのだ。
そりゃぁもう、かなりのお怒りの顔で。
音の方を恐る恐る振り返った彼らの目に、戦場で英雄とまで言われた彼はどのように映ったのだろう。
「余計な世話だと言ったよな?」
地の底から聞こえてくる様な低い声に、目の前の大の大人の男達が震え上がるのを見た。
「お前達…大事な身体の王妃に負担をおかけして兄上の怒りを買いたいか!?」
そう睨み据えられて、彼等の1人が
「め…滅相もございません!」と泣きそうな声で叫んだ。
そんな彼らに、ジェイドはアゴで階段を指して「とっとと、自分の仕事に戻れ」と凄んだ。
その言葉を聞くや否や、腰を抜かしそうなほどに慌てた2人が書記官達を連れて逃げて行った。それを唖然と見送っていると、深く息を吐いたジェイドが
「巻き込んですまない。部屋まで送るよ」と言って私の手を取ったのだった。
「すまないな、色々とうるさくて」
彼はリビングルームまで私を送ると、申し訳無さそうに詫びた。
別にジェイドが悪いわけでもないし、何なら彼が1番の被害者だろうに…そう思って苦笑して肩をすくめる。
「でもジェイドはいいの?国王になれるチャンスなのよ?」
私の問いに、彼も肩をすくめる。
「国王なんて細やかな仕事、俺に向くと思うか?勘弁してくれ」
「アナタならそう言うと思ったわ」
そうおどけて笑って見せれば、繋いだ手が一層強く握られる。先ほどまでふざけていた彼の表情が真剣な色に変わっていて。
「言っただろう?俺はお前が唯一だ」
そう落ち着いた声で言い聞かせるように言われて…。
「それとも、俺でない方がいいか?」
どこか不安気な最後の言葉に私は首を大きく横に振る。
「ジェイドじゃなきゃ…いやだわ」
しっかりと彼の目を見て言った。ずっといつ言おうかと悩んで…言いたかった言葉だ。
私の言葉に彼が目を見開く。
それににこりと笑ってやると、唐突に手を強く引かれて彼の胸に引き寄せたられた。
ぎゅうっと強く身体を抱きしめられて…。
「はぁ~、くそっ~このタイミングかよ~」
なぜか悔しそうに呟かれた。
「ん?何が?」
訳がわからず、それでも答えるように彼の背に手を回せば、一層強く抱きしめられて。
「なんでもない。とにかく心配するな、大丈夫だから」
そう耳元で低く優しく囁かれた。