憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
その日の夕、リビングに戻ってきたユーリ様は随分とお疲れのようだった。
ハーブティーを入れて、向かい合わせに座ると、椅子の背にもたれて、宙を見上げていた彼女は大きなため息と共にこちらを見た。
「またアルザバルドから親書が来たんだよ。あちらはどうやら諦めるつもりがないらしい。近々使者を送ると言ってきているよ」
その言葉に、胸の奥が締めつけられる。
「あちらも、随分と本気なんですね?」
絞り出すように言うと、ユーリ様はお茶を一口飲んで首を振る
「どれほど頼まれようと譲れない、これだけはね」
そう言って何かを思い出したのか、眉間に皺を寄せる。
「叔父上には、議会との均衡を取って、軍事的理由を主張して、3年猶予をもらってその間に子をもうけたらどうだとも言われたよ。でも必ず男が2人以上産めるとも限らない。
もし男が産まれなければ、トルヴィアナ公爵家の息子の誰かをジェイドの代わりに出してもいいと」
突然の話に私は息を飲む。

「それって!」
思わず剣呑な視線をユーリ様に向けてしまう。ジェイドとの間に男子が産めなかったら、別の男性とも?考えただけでゾッとした。
しかし
「アルマやジェイドは物じゃない!絶対に…そんな事はさせない」
拳を握って怒りを抑えて吐き捨てるようにユーリ様は言い捨てる。
そう、きっとそんな事ユーリ様もジェイドも誰も認めない。きっとその様子で、トルヴィアナ卿にも宣言してきたのだろう。しかし、議会との調整を図るのにも重要なポジションであるトルヴィアナ卿は大切な協力者で
「くれぐれも無理はなさらないで下さい。私に出来ることがあれば何でも言ってください」
身を乗り出して、ユーリ様を宥めるように言えば、ユーリ様は深く深呼吸して
「ありがとうアルマ。色々と気苦労をかけてしまって申し訳ない」
そう、申し訳なさそうに目を伏せた。
議会で次にジェイドのアルザバルド行きの議題が出たのは、それから3日後の事だった。
やはり前回と変わらず、外交や貿易筋は賛成する声が多く、反対に軍部派や慎重的な意見を出す者もいて、議会の結論は半々となった。
そうであるならば、国王としては、要請を受け入れないとユーリ様は結論をつけ、これでこの議論は終わったものだと思われた。
折悪く、その日の夕にアルザバルドから使者が到着したのだ。
しかも、結婚を申し入れてきた王女を伴って。
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