憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
「アルザバルド王女、アミーラ・カウサル・アルザバルドでございます。」
急ごしらえで整えられた迎賓館に急いで駆けつけると、迎えに出てきた少し歳下だろう女性がクイニー式の礼を優雅に取って出迎えた。その完璧な仕草と物腰だけで、彼女が本当に王女本人であるとはわかった。
透き通るような白い肌に、対照的な黒く艶やか髪。人形のように長いまつ毛と大きな瞳は少し彼女を幼く見せているようだが、華奢な身体と相まって神秘な印象すら感じられた。
「はじめましてアミーラ王女殿下。クイニー王国妃、アルメリアーナと申します」
彼女に続いて挨拶をすれば、彼女の大きな瞳が、吸い寄せられるように私のお腹に向けられた。
「まぁ、ご妊娠で大変な時に、このように不躾な訪問をしてしまい申し訳ありません」
申し訳なさそうに眉を下げて深々と頭を下げられる。
その認識があるのならば、正直先触れくらいはよこしてほしいところだ。
「まさか王女陛下ご自身がいらっしゃるとは思いもしませんでしたので驚きました。ご用件は…先頃から頂いておりますご婚姻の事…でしょうか?」
単刀直入に問えば、彼女はスッと背筋を伸ばして、こちらを見据えた。
「はい。国王陛下に是非この私の夫に王弟殿下をいただきたいとお願いに参りました。」
「なぜ?ここまでしてジェラルド殿下を」
立ち話も…と言うことで、場所を移して腰を落ち着ける。
対面した、アミーラ王女は私の問いに待っていたとばかりに瞳を輝かせて、そして頬に手を当てた。その表情は…つい最近レイリーと対面した時にも見たもので。白い肌をピンク色に染めた彼女は潤んだ瞳でうっとりとする。
「実は数ヶ月前お忍びで旅行中に、貴国の慰霊祭の現場に居合わせまして」
慰霊祭に…他国の王女殿下が…お忍びで!?
あのテロ行為のあった場面に、知らぬところで他国の要人を巻き込んでいた事にゾッとした。
そして何より、一国の後継者たる彼女が、お忍びで他国に外遊に出ることができているという事に驚いた。クイニー王国の王室ではまずありえない。
そんな、幾重かの驚きを覚える私を気にする事なく、彼女は「はぁっ…」と熱いため息を漏らす。
「身を挺して、職務を全うされるお姿が素敵でした」
その瞳にはどうやら私は映っていないらしい。
困惑して彼女の後ろに控える従者の初老の男性を見れば、彼は困ったように眉を下げて深々と頭を下げるだけだった。
「ジェラルド殿下を…と言うのは王女殿下ご自身のご希望あっての事だったという事でよろしいのでしょうか?」
気を取り直して問うてみれば、彼女は弾かれたように私を見てそして、握り合わせた手をテーブルに乗せて身を乗り出した。
「はい!私の強い希望がありまして殿下をお迎えに上がりました!近々議会でこの件が話し合われると伺いました!私の思いや我が国の王室がいかに殿下のお越しを歓迎しているのか、直接お話し出来ないかと思いましたの!」
「そ、、そうですか…行動力がおありなのですね」
あまりの剣幕に引き気味の私は、なんとかそれだけを言って、王妃の顔で笑いかける事になんとか成功する。
そんな私の言葉に、彼女は背筋を伸ばして真剣な顔で頷く。
「それだけ私が本気だと受け取っていただきたいのです!できれば殿下ともお会いして直接お話しをさせていただきたいのです。」
彼女本人が来る事によって、議会の反対派への圧力と、ジェイド本人を説得する事が目的…ということなのだろう。そして、その窓口となってしまった私も表向きでは蚊帳の外だったものが一気に矢面に立たされてしまったのだ。
ここは対応を間違うと外交問題になりかねない、しかし要求を飲むだけでもいけない。
勤めて平常心の顔を作り、私は淡々と説明する。
「ご希望に添えるよう努力はいたしましょう。ジェラルド殿下との面会については、殿下のお仕事との調整次第となります」
とりあえず、せっかく来た彼女をジェイドに合わせる事なく無碍に返すべきではないだろう。私個人としては、出来るなら会って欲しくはないけれど、こればかりは仕方ない。
「議会の件ですが…申し訳ありません。実はすでに本日議会での決定が降りまして…この件はお断りするという事で我が国側の返答書をおそらく今事務方が、ご用意している頃かと…」
淡々と事実を伝えれば、目の前の彼女は大きな目を見開いて「そんなっ!」と声を上げる。
「では国王陛下にも是非面会の機会を!私からご説明をさせてくださいませ!議会のご意見は割れていると伺っております。せめて猶予をいただきとうございます」
「王女殿下!」
とうとう立ち上がった彼女を、後ろの従者が嗜める。
彼女は恥じたようにすぐ座ったものの、その顔は決して諦めないというように私を見ていて…。代わりに従者が口を開いた。
「失礼をお許し下さいませ王妃陛下。しかし王女も我が国も真剣にジェラルド殿下の婿入りを望んでおります。今一度、国王陛下とジェラルド殿下へ掛け合う機会をいただけませんでしょうか?」
そう念を押すように頭を下げられて、私は小さく息を吐いて「お約束は出来かねますが、なるべく添えるよう努力いたしましょう」と言うしかなかった。
急ごしらえで整えられた迎賓館に急いで駆けつけると、迎えに出てきた少し歳下だろう女性がクイニー式の礼を優雅に取って出迎えた。その完璧な仕草と物腰だけで、彼女が本当に王女本人であるとはわかった。
透き通るような白い肌に、対照的な黒く艶やか髪。人形のように長いまつ毛と大きな瞳は少し彼女を幼く見せているようだが、華奢な身体と相まって神秘な印象すら感じられた。
「はじめましてアミーラ王女殿下。クイニー王国妃、アルメリアーナと申します」
彼女に続いて挨拶をすれば、彼女の大きな瞳が、吸い寄せられるように私のお腹に向けられた。
「まぁ、ご妊娠で大変な時に、このように不躾な訪問をしてしまい申し訳ありません」
申し訳なさそうに眉を下げて深々と頭を下げられる。
その認識があるのならば、正直先触れくらいはよこしてほしいところだ。
「まさか王女陛下ご自身がいらっしゃるとは思いもしませんでしたので驚きました。ご用件は…先頃から頂いておりますご婚姻の事…でしょうか?」
単刀直入に問えば、彼女はスッと背筋を伸ばして、こちらを見据えた。
「はい。国王陛下に是非この私の夫に王弟殿下をいただきたいとお願いに参りました。」
「なぜ?ここまでしてジェラルド殿下を」
立ち話も…と言うことで、場所を移して腰を落ち着ける。
対面した、アミーラ王女は私の問いに待っていたとばかりに瞳を輝かせて、そして頬に手を当てた。その表情は…つい最近レイリーと対面した時にも見たもので。白い肌をピンク色に染めた彼女は潤んだ瞳でうっとりとする。
「実は数ヶ月前お忍びで旅行中に、貴国の慰霊祭の現場に居合わせまして」
慰霊祭に…他国の王女殿下が…お忍びで!?
あのテロ行為のあった場面に、知らぬところで他国の要人を巻き込んでいた事にゾッとした。
そして何より、一国の後継者たる彼女が、お忍びで他国に外遊に出ることができているという事に驚いた。クイニー王国の王室ではまずありえない。
そんな、幾重かの驚きを覚える私を気にする事なく、彼女は「はぁっ…」と熱いため息を漏らす。
「身を挺して、職務を全うされるお姿が素敵でした」
その瞳にはどうやら私は映っていないらしい。
困惑して彼女の後ろに控える従者の初老の男性を見れば、彼は困ったように眉を下げて深々と頭を下げるだけだった。
「ジェラルド殿下を…と言うのは王女殿下ご自身のご希望あっての事だったという事でよろしいのでしょうか?」
気を取り直して問うてみれば、彼女は弾かれたように私を見てそして、握り合わせた手をテーブルに乗せて身を乗り出した。
「はい!私の強い希望がありまして殿下をお迎えに上がりました!近々議会でこの件が話し合われると伺いました!私の思いや我が国の王室がいかに殿下のお越しを歓迎しているのか、直接お話し出来ないかと思いましたの!」
「そ、、そうですか…行動力がおありなのですね」
あまりの剣幕に引き気味の私は、なんとかそれだけを言って、王妃の顔で笑いかける事になんとか成功する。
そんな私の言葉に、彼女は背筋を伸ばして真剣な顔で頷く。
「それだけ私が本気だと受け取っていただきたいのです!できれば殿下ともお会いして直接お話しをさせていただきたいのです。」
彼女本人が来る事によって、議会の反対派への圧力と、ジェイド本人を説得する事が目的…ということなのだろう。そして、その窓口となってしまった私も表向きでは蚊帳の外だったものが一気に矢面に立たされてしまったのだ。
ここは対応を間違うと外交問題になりかねない、しかし要求を飲むだけでもいけない。
勤めて平常心の顔を作り、私は淡々と説明する。
「ご希望に添えるよう努力はいたしましょう。ジェラルド殿下との面会については、殿下のお仕事との調整次第となります」
とりあえず、せっかく来た彼女をジェイドに合わせる事なく無碍に返すべきではないだろう。私個人としては、出来るなら会って欲しくはないけれど、こればかりは仕方ない。
「議会の件ですが…申し訳ありません。実はすでに本日議会での決定が降りまして…この件はお断りするという事で我が国側の返答書をおそらく今事務方が、ご用意している頃かと…」
淡々と事実を伝えれば、目の前の彼女は大きな目を見開いて「そんなっ!」と声を上げる。
「では国王陛下にも是非面会の機会を!私からご説明をさせてくださいませ!議会のご意見は割れていると伺っております。せめて猶予をいただきとうございます」
「王女殿下!」
とうとう立ち上がった彼女を、後ろの従者が嗜める。
彼女は恥じたようにすぐ座ったものの、その顔は決して諦めないというように私を見ていて…。代わりに従者が口を開いた。
「失礼をお許し下さいませ王妃陛下。しかし王女も我が国も真剣にジェラルド殿下の婿入りを望んでおります。今一度、国王陛下とジェラルド殿下へ掛け合う機会をいただけませんでしょうか?」
そう念を押すように頭を下げられて、私は小さく息を吐いて「お約束は出来かねますが、なるべく添えるよう努力いたしましょう」と言うしかなかった。