愛してる 〜ひそひそ裏話〜

加波子と亮は写真を1枚も撮らなかった

 亮にはいわゆる黒歴史があります。この先ずっと、「何」があってもおかしくない。それでもいいと、亮は思いながら生きていたことでしょう。

 しかし守りたいもの、存在。加波子が現れました。もしその「何」かがあった時、加波子も狙われ危険に脅かされ、襲われる可能性は高い。

 しかし奴等は仕事が早いので、加波子のことを探すことなど簡単です。容姿など関係なく、見つかるものは見つかります。それを理解していながら、少しでも加波子の存在を隠したかった。亮はそう思っていたのです。

 そして加波子は、亮が何も言わなくとも亮の気持ちに気づいていました。察していたのです。

 だからふたりは写真を撮りませんでした。

 元々、亮も加波子も写真は苦手で、極力避ける性格でした。

 ふたりが始まり、最期までの時間。写真が必要なかったのは、言うまでもないことかもしれません。
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